Lazarusのアイコンと古代エジプトについて

Lazarusのアイコンと名前の由来

以前ご紹介したFirefox用のアドオンで、入力フォームのデータをうっかり消してしまっても
復元してくれるLazarus: Form Recovery (ラザロ:フォームリカバリー)という便利機能があり、
いいアイコンと名前だなあと思ったので、私の思うその由来と、
それに関連する古代エジプトの文化について書いてみようと思います。

ラザロのアイコンこのLazarusの金色のアイコンですが、十字架の上部分が丸になっているマークは
古代エジプトで使われていた象形図で『アンク』と呼ばれるものです。
生命を象徴する図形で、アンクの力を信じる者は一度だけ生き返ることができると信じられていました。
このことから『消失したテキストを復活させる』拡張機能のアイコンとして
作者さんはこの図形を選んだのではないかと思います。
ちなみに『Lazarus』という名前も、死の4日後にイエス・キリストが復活させた人物の名前で、
キリスト教における復活の奇跡のひとつとして宗教画や楽曲の題材となっています。
名前もアイコンも機能を象徴した名づけがされていて作者さんの愛着が感じられますね。

古代エジプトにおいてはこのアンクが名前に入っているファラオも多かったようです。
かの有名なファラオ、ツタンカーメンの名前 Tut-ankh-amen にも真ん中にankh(アンク)と入っています。
トゥト・アンク・アメン、つまり
太陽神ラー(=別名アメン)の生命(=アンク)を象徴した姿(=トゥト)
という名前なんですね。
こうしてみると何だかすごいご利益がありそうな名前です。さすがファラオ。

アンクはエジプト十字や生命の鍵とも呼ばれ、壁画では神々が永遠の命の象徴として手にしていたり、
背後に描かれていたりすることが多く、また、このアンクの形状が惑星ヴィーナスを示す惑星記号、
ひいては女性を表すマークの元になったとする説も有り、
意外と身近なところでさりげなく私たちの生活に浸透しています。

現代でもアンクはエジプトにおいて一般的な図形でお守りやアクセサリーとして広く使われています。
日本でもアクセサリーやキーホルダーが販売されているのを見かけます。
健康や長寿、繁栄の意味がありますので、もしアンクのアクセサリーを見つけたら
お守り代わりに身に着けてみるのも良いのではないでしょうか +.d(・∀・*)+.゚

エジプトと漫画とタロットカードのお話

更に余談ですが、『ジョジョの奇妙な冒険』という漫画の第三部において
モハメド・アヴドゥルというエジプト人のキャラクターが登場します。
アヴドゥルのスタンド “マジシャンズ・レッド(魔術師の赤)” が使う技 “クロス・ファイヤー・ハリケーン” は
アンク型の炎を生み出して敵を焼き尽くす技です。
(ジョジョをご存知ない方はスタンドについてはひとまず
『自分の意思に従って戦う守護霊のようなもの』と思ってください)

第三部の最終決戦の舞台がエジプトだったので、最後の方の敵スタンドは
エジプト9栄神(エジプト九柱の神々をモデルにした神)がモチーフでしたが、
残りのスタンドは敵味方問わずタロットカードに基づいて名称や特色がつけられており、
アヴドゥルのスタンドは“マジシャンズ・レッド(魔術師の赤)” という名前のとおり
『魔術師』のカードをモチーフにしたものでした。

魔術師のカード
魔術師のカードが意味するのは『強い意志、物事の始まり、無限の可能性、エネルギー』、
象徴される惑星は太陽、もしくは水星。
また、炎が象徴すると言われるものは『破壊と再生』です。

魔術師の頭の上に描かれている無限大マーク(∞)の起源は一説では
『ウロボロスの蛇』と呼ばれる、自分の尾を飲み込んで円形になっている蛇です。
始まりと終わりを内包したウロボロスの蛇が象徴するものは『死と再生』。
このカードの絵柄の魔術師が腰に結んでいるベルトも、実はただの紐ではなく
尾を飲み込んだ蛇になっているのが分かりますでしょうか。

更にそのウロボロスの蛇の元になったと言われているのが古代エジプトにおける冥界の蛇神メヘンです。
壁画にも良く描かれているのに、皆さんからは「ちょっとした模様?」とか、
「なんかウネウネした…壁?日除け?」くらいにしか認識されていない可愛そうな蛇神さまです。
古代エジプトにおいて、太陽神ラーは夜の間は船に乗って冥界を旅し、
冥界にいる邪神に負けず船旅を終えれば無事にまた太陽が現れると考えられていたそうです。
(なので日食が起きたら「今日はラー様が負けた!冥界の神が勝った不吉な日だ!」ということですね)
そんな太陽神の船旅を体を張って護衛している偉い蛇神さまなので、
もしもどこかで船が描かれているエジプト壁画を見かけることがあったら探してみてくださいね。
こういう↓感じで蛇神さまは頑張っています。
エジプト壁画
物事の始まり、無限の可能性を意味し、太陽を象徴する『魔術師』のカードと、
太陽を司る神ラーを守護する蛇神メヘン。
蛇神メヘンを起源として生まれた無限大のマーク。
破壊と再生を象徴する炎と、生命を象徴するアンク。

こうして並べてみると、作者である荒木先生が
エジプト人であるアヴドゥルのスタンドを象徴するカードとして『魔術師』を選び、
また炎を操る技を持たせ、その炎の形状をアンクにした理由が分かるような気がしますね。
ジョジョの単行本をお持ちの方は第三部をちょっと読み返していただいて
アヴドゥルの出身地・エジプトの古代文明まで思いを馳せてみてください。

近年、エジプトでは政情不安によるデモやテロが発生し、
その混乱に乗じた美術品の盗難や破壊が多発しています。
せっかく自国が数千年もの長い間守ってきた文化遺産を盗んで他国に流出させ、
盗めず美術館に残ったものは破壊してから去るというのが全く理解できませんが…
自国の歴史そのものでもあり観光資源でもあるのに事態が鎮静化した後どうするんでしょうか。
他に変わりがある物ではないのに勿体無さすぎます。
早く混乱が落ち着いて、一つでも多くの遺産が無事エジプトに残ると良いですね。

仮面ライダーのアンクはこのアンク?

(2014年9月1日 追記)
仮面ライダーオーズ/OOO にアンクという名前のキャラクターが居ました。
アンクは怪人なのですが、なんやかんやで主人公の無二の相棒になっていくキャラクターで、
アンクを演じていた三浦涼介さんが、現在公開されている映画 『 ろうに剣心 京都大火編 』に
“ 刀狩 ” の張 という役で出て活躍されていたのでふと思い出しました。

そう言えばあのアンクもこのアンクだったのかな?ということでちょっと調べてみると
東映株式会社の公式コメントがありました。 ⇒第4話エピソードガイド
鳥の怪人、ということで 『 鷹の目 』 をイメージして
ヒンディー語で『 目 』という意味のアンクになったということです。
ヒンディー語で書くとこう⇒ आँखों  ・・・読めない・・・・。どこが切れ目なんでしょう。
同じアンクという響きでも色々な意味があるものですね。

ちなみに古代エジプトにおいて、鳥の目として有名なのはホルスの目(ウジャトの目)ですね。
ホルス神は隼(ハヤブサ)の頭部を持つ太陽と天空の神です。
もしキャラクターの名づけのときに製作陣が『 鷹 』ではなく『 隼 』をイメージしていたら
怪人アンクの名前はホルスになっていたのかもしれません。

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