『 世界を変えた才能 』  アラン・チューリングとニコラ・テスラ

   2016/07/13   icon-clock-o読了時間:約93分6秒

コンピュータにまつわるホリデーロゴの記事でもご紹介した
アラン・マシソン・チューリング(Alan Mathison Turing)。
この2014年は、人工知能が史上初めてチューリング・テストを突破し、
チューリングにまつわる話題が大きく扱われたこともあり、改めて彼について記したいと思います。

ついでに夏休みの宿題に焦る学生さんの自由研究の助けになるようなことを、と思って書いていたのですが
同性愛やら自殺やら出てくるので宿題には向かないかもしれない・・・(;-A-;) と、途中で我に返りました。
ということで、宿題のお役に立つことは諦めて、チューリングと同じく非凡な才能を持ちながらも
報われない運命を辿ったニコラ・テスラについても書き足していたら物凄く長くなってしまいました。
多分このブログの中で一番長い記事なので、お暇な時にでもお付き合いいただけたら幸いです。

 目次 

チューリングの功績
チューリングがどういった人物かを簡単にご紹介

アルゴリズムとは
この世の全てのコンピュータの根幹を成すもの。
 ・割と身近なアルゴリズム
 ・ちょっと詳しくアルゴリズムについて
 ・アルゴリズムの中身
 ・具体的なアルゴリズムの例
 ・アルゴリズム以外にチューリングさんの生み出したもの

コンピュータ界のノーベル賞  チューリング賞
チューリングの名を冠した計算機科学界における最高の栄誉。
 ・歴代受賞者はこんな人達
    ∟《チューリング賞とノーベル賞のダブル受賞者》 ハーバート・アレクサンダー・サイモン
    ∟《女性初のチューリング賞受賞者》 フランシス・エリザベス・アレン
    ∟《パソコンの父と呼ばれる技術者》 アラン・カーティス・ケイ

知恵の実とコンピュータ
コンピュータ研究者にとってリンゴは特別?

チューリングの名誉回復
同性愛で有罪判決を受けたチューリングの名誉が回復されるまで

チューリング・テスト
今しゃべっている相手は機械?人間?
 ・チューリング・テストを突破した人工知能

果たして人口知能は心を持ち得るか
人間の脳を、その思考力を、アルゴリズム化してコンピュータに搭載することは可能か、という
コンピュータ研究者とSF好きにとっての永遠のテーマについて。
 ・創作の中の人工知能
 ・人工知能に対する思想
 ・真の意味での知能
 ・人工知能が『 思考 』するようになったら
 ・技術的特異点 テクノロジカルシンギュラリティ

チューリングを描いた作品
その非凡な才能と悲劇的な人生は数々のフィクションの題材に。

不遇の天才発明家 ニコラ・テスラ
もう一人の報われない天才、真の『 20世紀を発明した男 』 ニコラ・テスラについて。
 ・まずは電気のお話から
 ・電気産業の始まり
 ・テスラ、エジソン電灯に就職。そして退職
 ・電流戦争
 ・報われない才能と、幻のノーベル賞
 ・一方その頃エジソンは
 ・壮大な構想・世界システム
 ・テスラの晩年
 ・メディアによるマッド・サイエンティスト像
 ・フィラデルフィア実験の真相
 ・地球を割ろうとするマッド・サイエンティスト?
 ・改めてテスラの功績に目を向けてみると

チューリングの功績

先にチューリングについて改めてご紹介しておきます。
チューリングは1912年6月23日生まれ、1954年6月7日没の
イギリスが生んだ偉大な数学者、論理学者、暗号解読者、計算機科学者です。

24歳の時に開発した チューリングマシン (理論上の機械であり実体はない、仮想マシン)により
『アルゴリズム』と『計算』の概念を定式化し、計算機科学の発展に大きな影響を及ぼしました。
これの何がすごいかというと、
コンピュータの現物さえ存在しない時代に、コンピュータがどういうものか、
コンピュータにどう指示を出せばいいかを定義した
ことです。
現在に至るまでこの世に存在する全てのコンピュータはチューリングマシンの理論に則っており、
チューリングは コンピュータの父  、あるいは 計算機科学の父 と称されます。
  ⇒ アルゴリズムとは

こういった業績の大きさから、‘‘コンピュータ界のノーベル賞’’ 、
‘‘コンピュータ研究者への最高の栄誉’’ と呼ばれる
 ACMチューリング賞 は彼の名前が由来となっています。
  ⇒ チューリング賞

他にもドイツの暗号機エニグマの設定を見つけるための機械 bombe(ボンベ) を開発し、
当時 「解読は不可能な難攻不落の暗号」 と言われたエニグマ(和訳すると “ 謎 ” )を解読しました。
このことにより第二次世界大戦におけるイギリス対ドイツの戦局は大きく変わり、
連合国軍の勝利を決したとも言われています。
(ちなみに数十年経ってチューリングの功績がイギリスによって公表されるまで
 ドイツはエニグマが解読されたとは知らなかったようです。
 難攻不落を突破できる人が居るとは思いもよらなかったんですね)

その類稀な才能と努力により自国に多大な貢献をしたはずが、いざ戦争が終わると
暗号解読の才能が他国のものになることを恐れた政府により厳しい監視が付けられました。
更には同性愛者だと判明すると有罪で投獄され(当時のイギリスで同性愛は違法でした)、
女性ホルモンの注射による科学的去勢の実刑を受け、
新聞には『 有名大学講師の醜聞 』といった風に報じられ、
仕事内容が軍事機密だったためチューリングの功績を全く知らない世間の人からは散々に批難を浴び、
近所で起きた性犯罪の犯人と疑われ、研究の区切りを付けたと同時に仕事はクビになり、
有罪判決の2年後に青酸カリを塗ったリンゴを食べて自殺したと言われています。
  ⇒ 知恵の実とコンピュータ

亡くなった時まだチューリングは41才。酷い話です。
政府がチューリングの功績、つまり計算機科学の分野での活躍や
暗号解読によってイギリスの人命を守り連合国軍の勝利に貢献したことなどを公表したのは
チューリングの死後20年が経過してからでした。
  ⇒ チューリングの名誉回復

チューリングはある機械が知的かどうか(人工知能が『 思考 』していると言えるかどうか)を判定する
 チューリング・テスト を考案し、現在の人工知能(AI)の研究にも多大な影響を与えています。
チューリングがもっと長生きしていたら、その後のコンピュータの進歩は、
そして人工知能の開発スピードはどんなにか速かっただろうと思うと益々悔やまれますね。
  ⇒ チューリング・テスト
  ⇒ 果たして人口知能は心を持ち得るか

ちなみにそんなチューリングさんは花粉症に悩まされていたようで、
毎日ガスマスクをかぶって自転車出勤していたのだとか。
現代でそれをやったら確実に通報されてしまう・・・
やっぱり天才と呼ばれるようなひとはちょっと変わったひとが多いのかもしれません。
  ⇒ チューリングを描いた作品
  ⇒ 不遇の天才発明家 ニコラ・テスラ

アルゴリズムとは

チューリングマシンにより定式化され、現在に至るまで全てのコンピュータの根幹となっているアルゴリズム

割と身近なアルゴリズム

『 独自アルゴリズム搭載! 』 『 最新アルゴリズムで~が可能に! 』
そんなキャッチコピーが付いたソフトウェアや家電製品も最近では増えてきました。
アルゴリズムが何か知らないひとからしたら別にセールスポイントにもならないんじゃないかな・・・と
電器屋さんでいつも思うのですがどうなんでしょう。
それとも『 なんだか良く分からないけどスゴイっぽい 』という心理効果狙いなのでしょうか。

NHK教育番組の『 ピタゴラスイッチ 』でもアルゴリズムの歌がありますが
あのアルゴリズムもこのアルゴリズムです。
歌詞で手順を指示して、“ いつもここから ”のお二人や、聞いている人が動作を行います。
この歌詞で示された手順がアルゴリズムであり、
アルゴリズムによって『 ぶつかりそうでぶつからない 』という動作結果が出ています。
さりげなくコンピュータの基礎まで入れてくるとは侮れませんねNHK教育。

ちょっと詳しくアルゴリズムについて

更に詳しく言えば、アルゴリズムとはコンピュータが正しく情報を処理するための元であり、
コンピュータにアルゴリズムを指示する記述がプログラムであり、
基本的にはチューリングマシンと同等の チューリング完全(計算完備) な処理が可能である
(しかし万能というわけでもない)言語がプログラミング言語と呼ばれます。

言い換えればアルゴリズムとは、コンピュータが入力に対する回答を行う、
つまりは動作を行うための計算処理であり解決手続きなので
有能な(何をもって有能かにもよりますが)コンピュータプログラムを作る時、
開発者の皆さんはいかにこの手順を効率化し軽量化し身軽に素早く結果を出せるかを考えている訳ですね。

アルゴリズムの中身

例として、【 道の向こう側に渡る 】という動作をアルゴリズムでもって導いてみます。

スタート地点:東西に走る国道の南側
 ・
 ・
 ・
ゴール地点:同じ国道の北側(国道に対してスタート地点からの垂直直線上とする)

この間の・・・の部分がアルゴリズム。

ここに入るであろう手順は
『 目の前の横断歩道を渡る 』
『 少し先にある歩道橋を渡る 』
『 1㎞先の横断歩道を渡って、北側の道を1㎞戻ってくる 』
『 穴を掘って地下を進みゴール地点に出る 』
『 棒高跳びで国道を飛び越える、また、それが可能になるまで練習を行う 』
『 地球を一周してゴール地点に回りこむ 』など。

私たちからすれば段々と手順がおかしくなっていますが、
コンピュータにとっては何もおかしなことはありません。
いずれも【 道の向こう側に渡る 】という問題を解決できる手順であることは間違いないのです。

人間であれば『 目の前の横断歩道を渡る 』が一番近道で労力も少ない方法だと瞬時に判断できますが、
コンピュータにそんなことはできません。
効率とか何も指示されていないのでどうしようもないんですね。
だってぇーあたしぃー向こう側いけってゆわれただけだしぃー
ゆわれてないことできるワケないじゃんってカンジ?(ギャル風)という行動基準です。

そこで、より賢い選択を出来るように『 距離が近いほうを優先 』と条件付けするも良し。
『 10分以内にゴールに辿り着ける方法のみ可 』という範囲指定をするも良し。
ついでに『 でも横断歩道が赤なら渡らない 』という禁止指定も付けて・・・
このような改良を繰り返して、開発者さん達は現在も
より洗練された優秀なアルゴリズムを生み出そうと頑張っています。

具体的なアルゴリズムの例
SFっぽくて楽しい(私のイメージ的に)顔認識アルゴリズム

カメラで人の顔を認識する、目・鼻・口の大きさを測る、骨格を読み取る、などが手順であり
プログラムの目的・到達地点は『 条件を満たした者のみ入出許可を出す 』とかですね。

皆さんお世話になったことがあるであろうデータソートアルゴリズム

特にパソコン内部のデータファイルを並べ替えるものなら、
データの名前を読み取る、名前を五十音で認識する、降順・昇順などユーザーの指示を反映する、などが手順で
目的は『 データファイルを名前順に整列させる 』です。

もっと身近なところでゲームの戦闘アルゴリズム

手順は、ゲームの主人公の攻撃力からダメージを計算、ダメージぶんをモンスターのHPから引く、
モンスターのHPがゼロになったら戦闘終了、その戦闘に割り振られた経験値を表示、など。
目的は『 正確な計算で戦闘の勝敗を決める 』となるでしょうか。

インターネット検索の最高峰・Googleのページランクアルゴリズム

手下(クローラーとか)に情報を集めさせる、集めた情報を蓄積・処理、情報の関連性を計算、などが手順で
目的は『 検索された単語に対して関連性が高く有益と思われる順にページをランク付け 』ですね。

このように、今や世界は膨大なアルゴリズムによって動いているといってもいいくらい
様々な場所でアルゴリズムは生み出され、活用され、改良されています。

アルゴリズム以外にチューリングさんの生み出したもの

チューリングマシン以外にもチューリングさんの名前はあっちこっちに残っています。
チューリングという字面がゲシュタルト崩壊しそうです。

◆チューリング還元と神託機械(オラクル付きチューリングマシン)、

◆チューリング・パターン(反応拡散モデル)
 タテジマキンチャクダイとかフィボナッチ数とかも合わせて調べると楽しいかも。
 でもこのパターンの中にはブツブツがぶわっと密集している図が出てきたりするので
 そういうのがダメな方は調べないほうが・・・
 私も無理なので未だに説明が直視できず、いまいち詳細がわかりません。

◆チューリング次数

◆チューリング等価  などなど。

私と同じく頭が痛くなってきた方は、もうとりあえず
「 チューリングさんスゴイ!! 」 と思っていただけたら(なんて適当な)。
「 ははは、こんなの序の口だよ! 」 という方は是非詳しい解説を載せてくださっている
サイトさんを検索して各々の数式なども合わせてご覧ください。

コンピュータ界のノーベル賞 チューリング賞

計算機科学の分野において、革新的な技術功績をあげた人物に対して贈られる ACMチューリング賞 
この賞は ‘‘コンピュータ界のノーベル賞’’ 、‘‘コンピュータ研究者への最高の栄誉’’ と呼ばれ、
Association for Computing Machinery (ACM) によって毎年受賞者が選ばれています。
公式サイトはこちら ⇒ A.M. TURING AWARD (英語)

歴代受賞者はこんな人達

歴代のチューリング賞受賞者の中から三名をご紹介します。

チューリング賞とノーベル賞のダブル受賞者

1975年にチューリング賞を受賞したハーバート・アレクサンダー・サイモン
人工知能の開発(特に意思決定支援システム)に対する貢献が認められ選出されました。
サイモン博士は1978年にはノーベル経済学賞も受賞しています。

意思決定支援システムとは、膨大なデータの収集・蓄積・分析を行い、
それに基づいた企業戦略や目標設定を行う、いわば 『 経営者のためのお助けプログラム 』 です。
会社が大きくなればなるほど、扱う商品や取引先や社員の能力は多岐に渡り
社長や幹部がどんなにがんばっても把握しきれなくなります。
そこでその『 把握しきれないデータ 』を変わりに順序だて、
処理して助言してくれるのが意思決定支援システムです。

意思決定支援システムを身近に感じられるフリーソフトで面白いものがあるので、
興味がお有りの方は是非インストールしてみてください。
意思決定支援システム 決めちゃおう君
対応OSにはXPまでしか書かれていませんが、ちゃんとWindows7でも動きますd(・∀・*)
 【 使用例 】
 問題の入力:今日の晩御飯
 代替案:ハンバーグ、うどん、カツオのタタキ
 評価項目:子供が喜ぶ、栄養がある、消化に良い
 以上の項目を入力してから、評価項目における優劣を決めると
 今日の晩御飯は何が適しているかを順位づけて示してくれます。

女性初のチューリング賞受賞者

2006年に受賞したフランシス・エリザベス・アレンはIBM所属だったエンジニアであり、
チューリング賞で初の女性受賞者です。
IBMにおける技術職として最高職位である『 IBM Fellow (IBM フェロー) 』に
任命されるほど優れたエンジニアでした。
コンパイラ最適化の分野におけるめざましい発展をもたらした事、
およびマルチプロセッサー環境での自動プログラム並列化の研究を評価され受賞者となりました。

コンパイラとは、私たちが記述したプログラムをコンピュータにも通じるように
翻訳してくれるソフトウェアのことです。この翻訳が適当だったり時間が掛かりすぎたりすれば
プログラム(アルゴリズム)を実行する際の負荷や処理速度に多大な問題が生じます。

フランさんのおかげでサクサクとコンパイラが動いている、
つまりパソコンは起動したらすぐ使用可能だし、
駅の電光掲示板は電車の到着予定時刻をリアルタイムで教えてくれるし、
スマホのゲームだって遊べる、バッテリーもある程度はもつ。
そう思うと感謝してもしきれません。

“ パソコンの父 ” と呼ばれる技術者

アラン・カーティス・ケイはアメリカ合衆国の計算機科学者、教育者、ジャズ演奏家(!?)です。

マイクロコンピュータ(パソコンの初期も初期の頃の呼び名)が出来るよりも前に
馬鹿でかくて重くて高価、複数人が共有するのが当然な企業のためのものではなく、
小型軽量で低価格であり、GUIを備え、個人が自由に扱えるのがコンピュータのあるべき姿だ

という理想概念『 ダイナブック構想 』を提唱しました。
ダイナミックな情報ツールで、簡単に持ち運んで開ける本のような感じ、ということで Dynabook 。

 ※GUI・・・使用するひとが目で見て簡単に理解できる操作性のこと。
      メニュークリックで項目が出てきたり、アイコンでわかりやすく表示されたり。
      現在のコンピュータはほぼGUIですね。
      詳しくは 【 C# 】 初心者による初心者のためのプログラミング用語の解説 をご覧ください。

1970年代には研究開発企業・パロアルト研究所(PARC)の設立に参加し、仲間たちと
ダイナブック構想を当時の技術で可能な限り具現化した Alto を開発。
また同時に世界初のオブジェクト指向言語 Smalltalkを開発しました。
AltoとSmalltalkはセットで 暫定Dynabook とも呼ばれます。
この暫定Dynabookを見学したスティーブ・ジョブズは大いに影響を受け
アップル社ではLisaを開発、その後Lisaの失敗を生かしたMacintoshの開発に成功します。
ケイさんは1984年アップル社のフェローになり、Macintoshの開発にも携わっています。

フェローは上のフランさんのところでも出てきましたね。
最高位のエンジニア、特別顧問みたいな感じでしょうか。
その他にもケイさんはWalt Disney Imagineering のフェロー、HP研究所のシニアフェロー、
京都大学の客員教授、マサチューセッツ工科大学の准教授などを務めました。
2014年現在はビューポインツ・リサーチ・インスティテュート(Viewpoints Research Institute)という
教育全般の改善と複雑なシステムの解析を行う非営利団体の代表を務めています。

そんな働き者で素晴らしいアイデアマンのケイさんですが、“ パソコンの父 ”という称号には否定的で
「 ダグラス・カール・エンゲルバートこそがパソコンの父だ 」 と言っています。
ダグラスさんは1961年にマウスを生み出し、ポインタという概念を編み出したひとです。
自分の思うがままにポインタを動かし、クリックし、メニューを開いてくれるマウスは
GUIに無くてはならないもの、つまりケイさんのダイナブック構想にも無くてはならないもの、
そういう意味で“ パソコンの父 ”と呼ばれるべきはダグラスさんだと思っていらっしゃるのかも知れませんね。

ちなみに、東芝のノートパソコンをお使いであれば、お手元のパソコンのシリーズ名として
『 dynabook 』と書かれているのがご覧いただけると思います。
これは東芝の開発陣が世界初の携帯可能パソコン(=ノートパソコン)を作っていた時に
ダイナブック構想と自分たちの目指すところが似ているとしてケイさんに敬意を表して命名したもので、
ケイさんの直筆サイン入りの初代・東芝Dynabook J-3100SS が
東芝本社ビル内で厳重に管理されているそうです。
超プレミアPCですね。一目でいいので見てみたい・・・U・x・U

もちろん、ここでご紹介した3名以外の受賞者の皆さんも素晴らしい功績を挙げた方々です。
そしてコンピュータに携わっているひと、これからコンピュータについて学ぶひと、
誰にでもチューリング賞受賞の可能性があります。
私はいつかチューリング賞の受賞者一覧に日本人の名前が入ることを楽しみにしています。

知恵の実とコンピュータ

チューリングは青酸カリを塗ったリンゴをかじって死にました。
映画 『 白雪姫 』を見た直後、チューリングが
「 魔法の秘薬にリンゴを浸けよう、永遠なる眠りが浸み込むように 」 
と言っていたのを同僚が聞いていたため、白雪姫になぞらえて自殺したのだと言われています。
なんだかミステリー小説の一幕のようですね。

リンゴの実というのは特別なものとして扱われることが多いように思います。

◆ギリシア神話のヘラクレスが受けた12の試練の内ひとつが
 『 ヘラの果樹園から不死の実・黄金の林檎を盗み出す 』というもの

◆キリスト教における禁断の知恵の実(現代ではリンゴとされることが多い)

◆ケルト神話における不老不死を与える実 abal = リンゴ

◆アーサー王伝説においてアーサー王が永遠の眠りについた地はアヴァロン
 (ケルト語「abal」が語源とする説があります)

◆ローマ神話における果実や果樹を司る女神ポーモーナの名前もリンゴという意味
 (ハロウィンのリンゴ食い競争『 ダック・アップル 』はこの女神に由来するといわれています)

◆ルーマニア神話の竜人であるズメウも黄金リンゴ泥棒を働きます

これはほんの一例ですが、他の木の実に比べてリンゴが象徴的に扱われることが多いのはなぜでしょう。
リンゴを上下に真っ二つに切ってみると種子が五芒星を描いていることから、
時代や国を問わず神性のあるもの、あるいは魔術的意義のあるものとされていたからでしょうか。

神話に限らず、近代文化の中でもニュートンが万有引力の法則を見出したきっかけもリンゴなら
MacやiPhoneを生み出した企業・Appleの社名とロゴマークもリンゴ。
(Appleのリンゴについては コンピュータにまつわるホリデーロゴ でお話したので端折ります)
これが一体どうしてなのかが個人的にすごく気になっているのですが、
コンピュータを研究することは、より人間にとって都合のいい世界を造ること。
思考能力さえ備えた高度なプログラムを造ろうとするのは擬似的に人間の心を造ること。
そう考えれば、キリスト教などの創世神話を持つ宗教観的には神にも等しい行為、
ひいては神に対する反逆になると心のどこかで感じているのかもしれません。
アダムとイブが知恵の実を食べて神々の楽園を追放されたように
コンピュータ研究者は禁断の果実をかじっているような行為に畏れを抱き、
無意識にリンゴが気になるのかもしれませんね。

ちなみにイギリスのマンチェスター大学に隣接しているサックビル・パークには
チューリングさんがリンゴを手に持ちベンチに腰掛けている姿の銅像が設置されています。

チューリングの銅像
なんでリンゴを持たせたのか、私には製作者さんの意図が良く分からないのですが・・・
例えば拳銃自殺をしたひとの銅像を作ったとして、拳銃をその手に持たせた意匠にはしないでしょう。
縁起が悪いというか、何もそこをチョイスしなくても、というか。
やはり海外の方にとってはそれほどリンゴが特別なものなのか、
それともこの銅像の手にあるリンゴにはかじられた痕が見当たらないので
『 リンゴをかじらず長生きしてほしかった 』という願いを表現したのか。
皆さんはどう思われますか?

ルーマニア神話の竜人

全くの余談ですが、上のルーマニア神話で黄金のリンゴをズメウが盗む、という話がありました。
その『 Prâslea cel voinic şi merele de aur(勇敢なPrâsleaと黄金の林檎) 』のあらすじは以下のとおり。
(Web翻訳と勘に頼っているので、正確なものは原典をご覧ください)
昔々あるところに、毎年いい感じに熟した頃に金のリンゴを盗まれ、自分で一つも食べることができずにキレ気味の王様がいました。
その息子である王子様(名前はPrâslea・・・なんて読むんでしょう?)はがんばって夜中に見張りを続け、ついにある夜、リンゴ園でガサゴソしている怪しい物音を聞きつけ、音を頼りに矢を射掛けます。
朝になってみると、リンゴ園から点々と続く血の跡が。王様はとりあえず熟したリンゴが無事だったので大満足です。
でも王子Prâsleaとその兄2人は血の跡を辿って、盗人(仮)を追ってみようと考えました。
どんどん血の跡を追って砂漠から渓谷へと旅を続け、その先には銅で出来た城があり、城の中にはなんと囚われの美しいお姫様が。
「 私を入れて3人の姉妹姫を3匹のズメウが誘拐してきました。
  ズメウと結婚とかマジで無理って言ってるのにあの竜ときたら 」 
そこで王子達は問答無用で銅の城のズメウ、銀の城のズメウ、金の城のズメウを殺します。
ちなみに金の城のズメウがリンゴ泥棒でした。
後は御伽噺の様式美、3人の王子様は3人のお姫様と結婚してめでたしめでたし・・・とはならずに手柄と美しい姫を独占しようとした二人の兄によってPrâsleaは殺されそうになったり、ドラゴンと戦って人助けならぬ鷹助けをしてみたり、生き延びて兄たちに復讐を遂げてみたりして、そこでようやくめでたし、めでたし。


しかし私には細かいところが良く分からないので定かではないのですが、
盗んだ金のリンゴはお姫様に貢いでいたようなので、悪いのはズメウじゃなくてお姫様じゃないの?と思います。
私と結婚したいなら盗みとかケチくさいことやめて金のリンゴは返してきてよ!と言えば済む話なのでは。
あと盗人とは言え、ズメウの言い分も聞かずにいきなり殺すとか王子様たち野蛮すぎませんかね。
お姫様の言っていることも、金のリンゴを取ってきてくれるズメウから
金のリンゴ園の所有者(になる予定の)王子様に乗り換えようとしただけかもしれないというのに。
ちょっとズメウかわいそう。

ドラゴンは西欧では強大な力をもつ神にも等しいものとして描かれるのに対して
東欧では竜人として、怪物の中でも人間に近い描かれ方をしているのがちょっと面白いですよね。
このお話の英語バージョンを見てみるとルーマニア語から英語に訳したひとの苦心の結果なのか
『 ogre(Zmeu) 』と書かれている箇所があるのですが、Ogreはオーガ、人型のモンスターであり、
欧米では人食い鬼のことを指します。
お姫様をさらうところも、勇敢な若者に問答無用で叩っ切られちゃうところも、
ズメウと日本の鬼の伝承には近いものを感じます。
日本の鬼が政権に逆らう地方豪族の暗喩であったように、ルーマニアにも
王様に逆らう地方領主がいたのかもしれません。

それでは逸れたお話を元に戻して、次はチューリングさんの名誉を取り戻した人たちのお話です。

チューリングの名誉の回復

2009年8月、コンピュータ・プログラマーのジョン・グラハム=カミングが
チューリングに対する謝罪をイギリス政府に求める請願活動を始めました。
『 英国に対して、何よりコンピュータの生誕と発展に対して
 多大な貢献をした偉大な人物が貶められたままで良いわけが無い! 』と
同性愛者としてチューリングを罰したこと、それによってチューリングが受けた迫害に対して、
チューリング自身のため、そしてチューリングの遺族のために謝罪を求めたのです。
2009年9月10日、イギリス首相のゴードン・ブラウンは請願を聞き入れ、政府として正式な謝罪を表明しました。

更に2011年、ウイリアム・ジョーンズというひとがインターネット上で
イギリス政府に対してチューリングの罪を免罪してほしいという電子請願活動を始めました。
この請願には21,000以上の電子署名が集まりましたが、法務大臣は
「 チューリングの有罪宣告は遺憾に思うが、当時の法律からすれば正当な判決だった 」
として請願を拒否しました。

しかしその後もインターネットを中心にチューリングの免罪を求める活動が続き
2012年に英国貴族院に対して正式な恩赦の法案が提出され、
2013年12月24日にはエリザベス2世女王の名をもって正式に恩赦が発効されました。
このとき発された恩赦は ” Royal Prerogative of Mercy “ 。
直訳すると慈悲の君主大権、つまりは王室だけが可能な特別な恩赦、という感じでしょうか。

これはイギリスの王室がもつ伝統的な特権で、
主に冤罪だったひとに対して判決を撤回するために発令されているものです。
イギリスの歴史の中でも王室恩赦を受けたのは43名しかおらず、
その中でもチューリングの場合は『 無実の罪だった 』、『 遺族からの強い訴えがあった 』などの
通常の恩赦の発令理由とは異なっており、とても珍しいパターンですね。

こうして、チューリングの生誕から100年、
その死から実に60年近くの時を経て、彼の名誉は正式に回復されました。

チューリング・テスト

チューリングの考案した、人工知能(Artificial Intelligence; AI)に関するテストです。
まず人間とコンピュータが、キーボードとモニターを介して対話します。
そして 「 今話している相手はコンピュータではなく人間である 」 と人間が確信すれば、
つまり機械が人間を欺くことができたなら、そのコンピュータ(人工知能)は知的であると判断するものです。

チューリング・テストを突破した人工知能

チューリングの没後60年にあたる2014年6月7日、イギリスのレディング大学では
英国王立協会の主催により『 Turing Test 2014 』というイベントが行われました。
このイベントには5台のスーパーコンピュータが参加し、チューリング・テストに挑戦しました。

その5台の内の1台、ユージーン・グーツマンくん(13歳)が
なんとチューリング・テストに合格したのです!(・∀・*)
史上初の快挙です。やったねユージーンくん。
ユージーン・グーツマン
テストは5分間、キーボードを使用したテキストチャットで、
挑戦者に対して審査員(人数などは非公開)が自由に質問を行います。
もちろん事前にどんな質問が来るかは分かりません。
チューリング・テストの合格条件は、5分間のテストで審査員達の30%以上を『 相手は人間だ 』と騙すこと。
今回ユージーンくんは33%の審査員を騙すことに成功し、合格が認められました。
しかしこの合格については激しい賛否両論が巻き起こっています。

テスト会場となったレディング大学副学長のケビン・ワーウィック博士は

『これまでにもチューリングテストに合格したコンピュータはあった』と主張する人がいるかもしれませんが、今回行われた試験はテーマや質問に制限を加えていない非常に厳格なものであり、ユージーンこそが史上初のチューリングテスト合格者であると高らかに宣言します。
ユージーンの快挙はコンピュータサイエンスにおける歴史的な節目です。

Kevin Warwick

と、前向きな意見を述べています。

逆に否定的なのは人工知能研究の権威であるレイ・カーツワイル博士を代表とした人工知能研究者たち。
カーツワイル博士は否定的な意見の根拠としてこのように述べています。

まず、ユージーン(人工知能)に想定されてていた
『ウクライナ在住の13歳のユージーン・グーツマン少年で
英語を母語としていないためネイティブな英語を使えない』という設定自体が
判定者の問答における『制限』以外の何物でもありません。

それに試験時間を5分間という短い時間に限定するなら、
素朴で騙されやすい判定者を欺くことは十分に可能です。
(中略)
ユージーンと実際にオンラインで会話をしたところ、私は全く感銘を受けませんでした。
それは、ユージーンが会話をまったく追従していないからです。
彼は、自分の言葉を繰り返すだけで、これは無関係な発言を繰り返すという
典型的なチャットボットの特徴です。

Ray Kurzweil


ポイントはユージーンくんのキャラ設定。
《 ユージーン・グーツマン(Eugene Goostman) 》
 ウクライナ在住の13歳の少年。
 お父さんは婦人科のお医者さんで、ペットはモルモットのビル。
 『 僕はなんでも知ってるんだよ 』といきがってみせたりする(中二病?)


カーツワイル博士が言うように、これが議論の元。
まずユージーンくんはウクライナのひとで母国語が英語ではないので、多少の文法ミスなどは見逃されます。
また、13歳なので、あまり専門的なことを知らなかったり、
知的な言い回しをしなくても仕方が無い、と審査員は考えます。
更に 「 キミは今の英国首相を知っている? 」 という質問をしたとして、
「 僕はなんでも知ってるんだよ 」 と返答があれば、知らないけど素直に知らないとは言えない
年頃だもんね、生意気でかわいいなあ、と納得するひともいるでしょう。
こうした設定はフェアでない、ということですね。

この結果について英国国教会の司祭でありジャーナリストでもあり、
更に人類学の教授でもあるジャイルズ・フレイザー博士は

This is light years away from a computer “being human”.

——-(私達が考える)『 人間らしい 』コンピュータからは光年ほどの隔たりがある

Giles Fraser



と自身のブログで厳しい見方をしています。
その他の海外の方のブログ記事なども(ぼんやりと解読して斜め読みで)
拝見したのですが、フレイザー博士のように否定的な意見のほうが多いように思います。

もちろん、今までの人工知能から更に躍進を遂げたと言えるユージーンくんは充分すごい、
これは人工知能研究の歴史において大いなる第一歩だ!と肯定的に捉えている方もたくさん居ます。
私もどちらかと言えば肯定派ですね。
少なくともチューリングさんが当時想定した『 人間らしい人工知能 』の最低ラインを超え、
これからの発展に希望を持たせてくれたのですから、もうちょっとユージーンくん
(と開発者のウラジミール・ヴェセロフさん、ユージーン・デムチェンコさんたち)を
思いっきり誉めてもいいんじゃないかなと思います。

そういえば 知恵の実とコンピュータ の項でも触れましたが、
宗教によっては人に近いもの、人を超えるものを造ることは
唯一神への反逆、邪教徒の所業、と見られてしまったりするんでしょうか。
信仰のある国では 『 教義に背くかもしれないけど自分も人工知能造りたい・・・! 』 という
悩める学者さんが居たりするんじゃないのかなーと思うのですがその辺りどうなんでしょう。

二足歩行の人型ロボット・ASIMOの前身である【 P2 】を造った時、HONDA(本田技研工業)の人達が
バチカン市国のローマ教皇庁を訪問して
「 あの、キリスト教徒の皆さん的にこれはアリでしょうかナシでしょうか 」 とお伺いにいったら
担当の司祭さまから
「 P2が作られたことは、神がせしめたこと。それもまた神の行為のひとつ 」 と言われたので
安心してキリスト教圏での公表に踏み切った、という逸話もあります。

もし私が失礼にならない程度の英語が扱えたなら
司祭でもあるフレイザー博士にブログコメントで尋ねてみたいところですが。
もしこの記事を学生さんが見ていたら、出来るだけ英語と数学を頑張ってください。
私のように後悔する前に・・・!

果たして人工知能は心を持ち得るか

人工知能については、コンピュータが誕生して以来ずっと
数多のSF作家がそれらを描き、数多の研究者が研究を続けています。

人間の脳を、その思考力を、アルゴリズム化してコンピュータに搭載することは可能か

これはSF好きおよびコンピュータ好きにとっての永遠のテーマと言えるでしょう。
0と1、電流のON/OFFというはっきりしたもので動いているコンピュータに
あやふやで無限とも言えるものを搭載させようとするのですからなかなか大変なことです。

創作の中の人工知能

人工知能はロマン、ということで映画や小説でも人工知能をテーマにしたものがよく取り扱われていますね。

一番新しいところでは、ジョニー・デップ主演の『 トランセンデンス 』でしょうか。
死ぬ間際の科学者の意識を、彼の奥さんがスーパーコンピュータにアップロード(データとして取り込み)します。
スーパーコンピュータの中で動いているのは果たして本当に元の科学者の意識なのか・・・
というあらすじのようです。
私はまだこの映画を見ていないのですが、 “ Transcendence = 超越 ” という映画のタイトルから察するに、
コンピュータへの移植で人類は死を超越できるのか、意思を持った人工知能は人類を超越できるのか、
そしてその先にテクノロジカルシンギュラリティを超越した世界は来るのか、という
テーマの映画なんじゃないかなーと予想しています。
 ⇒ 技術的特異点 テクノロジカルシンギュラリティ

人工知能に対する思想

人工知能については、主に唯心論を唱える人達と、唯物論を唱える人達との間で長らく議論が交わされています。
心は感性や哲学によるものだから物理的なものとしては捉えられない=心を造り出すことは不可能とする説 と、
全てのものの根源は物体である、ならば心さえも造り出せる可能性はあるとする説
皆さんのお考えはどちらでしょう。

例えば幽霊や予言といった超常現象については
「 魂や超能力はある!・・・証明方法は無いけど 」
「 脳の錯覚である。しかし多くの人間に “幽霊”  や “予言” という存在が
  概念として認知されているので、ある意味では存在すると説明できる 」
とそれぞれが主張しています。
仏教的な考えが主流の日本においては
「 いやあ、科学が進んで色々なことに説明がつくようになったとはいえ、
  不思議なことって確かにあるじゃない?魂や心だってあるんじゃないの? 」という
デカルトの二元論に近い考えを持っている方が多いかもしれません。

『 cogito, ergo sum (我思う、故に我あり) 』というデカルトの言葉があります。
例えば私たちに見えている世界の全てが
誰かが作った(映画・マトリックスにおける仮想現実のような)偽物の映像だったとしても、
「 え、私はここに居るよね?居るはず!だって居るんだもん! 」と考え続ける限り
自分が自分としてここに在るということだけは確かです。

同じく、誰かが 「 あなた以外の全ての人間は心が無いロボットだ 」と言ったとしても
「 そんなことないよ、確かに皆は人間だし心があるよ! 」 と自分が思えば心はあるのです。
心という概念はあやふやで、だからこそ在ると信じれば在るもの、とも言えます。

また、『 人間はひとくきの葦にすぎず、自然の中で最も弱いものである。しかし、考える葦である 』
というパスカルの言葉もあります。
宇宙の中のちっぽけな自分の身の程を知っていても、より良い方向へ進む道を思考する、
それこそが人が持つ尊厳であり、その素晴らしさの源が心である、とする言葉ですね。
これが真理であるのなら、人工知能が自分を解析するアルゴリズムの結果として
「 私は “ 心 ” を持った “ 人間 ” である 」という『 答え 』に至ったなら
それもまた真理になるんじゃないのかなあ、と思ったりするのですが
これはまあ哲学的な捉え方のお話なので別物なのかもしれませんね。

真の意味での知能

人工知能に 「 やあ、今日はいい天気だね 」 と話しかけて、
「 いいえ、今日の降水確率は90%です。いい天気ではありません 」と返ってきた場合と
「 おや、さっきまで雨が降っていたように思うのですが、もう止んだのでしょうか 」と返ってきた場合。
どちらが 『 人間らしい 』 かと言えばそれは後者でしょう。
しかしそれが 『 心がある 』 とイコールではありません。
あらかじめありとあらゆる会話パターンを入力しているだけなら、
後者の返事もただの組み込まれたアルゴリズムに従って返答を行っているだけで、
より人間らしく聞こえる、上手い回答をしているに過ぎないからです。

これが何の入力もされていないのに、自ら思考した結果として上手い回答を行った場合、
初めて人工知能は真の意味で思考する『 知能 』を得たと言えるのではないでしょうか。

人工知能が『 思考 』するようになったら
サミュエル・バトラーの危惧

人工知能が人間社会と大きく関わりをもつようになったとき、
人工知能の在り方や人間の反応、そこで発生するであろう問題、その可能性を世界で一番最初に指摘したのは
イギリス人作家のサミュエル・バトラー(1835生・1902年没)です。

彼はダーウィンの進化論に批判的なネオ・ラマルキズムを支持しており、
ネオ・ラマルキズムとは、生物の進化は進化論に説明されるような偶発的な有利性突然変異によるものではなく
生物の進化はある程度、生物自身によって自発的な進化の方向性を持っているとする説です。
物凄くざっくり言えば、キリンはもっと高いところの葉を食べたいと望んだから首が伸びたのであり、
コノハチョウは枯れ葉にまぎれることを選んだから木の葉に似た擬態を手に入れた、
というのがネオ・ラマルキズム(の元となったラマルクさんの唱えた理論)です。
しかしこれはその獲得形質の発生の頻度の問題と、それを如何に次代に遺伝させるのか
という点で説明が不足しており、現代ではほとんど支持されていない説でもあります。
種の保存に有利なものも不利なものも関係なく、遺伝子の変化が進化ですから
ネオ・ラマルキズムで述べられる有利な獲得形質の選択と、不利な形質の淘汰というのは
説得力が無いということのようです。

そんな進化論についても一家言もっていたバトラーさんですが
彼の作品として有名なのが、宗教、教育、進化論、親子関係、機械文明など
近代社会に対する風刺を詰め込んだユートピア的(同時にディストピア的)物語 『 エレホン 』 です。
翻訳版も残念ながら現在は絶版となっているので、
運よく古書店などで見かけた方は是非手に取ってみてください。
『 エレホン 』 の作中において、機械文明が栄え続ければ
やがて機械は自分達の手に余る高度な知能をもつかもしれないと危惧を抱いた人類が
ありとあらゆる機械を破壊し排除した社会を築いています。
その機械排除革命についての人類の考えとして以下のような記述があります。

『実際のところ意識をもつ機械が今はいないとして、
 最終的な進展を迎えれば、機会が意識を持たない保証はどこにも無い。
 軟体動物にだってほんの少しの意識があるのだ。

 過去数百年間の機械の異常なほどの進化を、
 それに対してあまりにもゆっくりである動物や植物の進化を振り返ってみるといい。
 高度に組織化された機械は、今日まで流れた時間の流れで言えば最後の5分間のように
 つい昨日まで存在してきた生き物とはまるで違うものだ。

 自我のある人間は2000万年もの間 存在してきた、と言う人が居る。
 でもその中の最後の1000年で機械がどれだけ進歩したかを見るがいい!
 世界があと2000万年続かないとは限らない。
 それならば機械だって最終的に意識を持つのではないだろうか 』

Samuel Butler 著 ”Erewhon” 23章・the book of the machines(機械の書) より



英語の訳は相変わらず適当なのですが、大体こんな感じのことを言っています(たぶん・・・)
人間やその他の動植物に比べ、機械の進化速度は驚くべきものであり、
このままの速度で進化を続ければ意識(思考)を持つ可能性があることについて触れています。

更に以下はバトラーさんが移住した先のニュージーランドで新聞記事に寄稿した文面です。

人類の後継者となるものはなんだろう。
われわれ自身が今、創造しているもの、それが答えだ。
やがて機械に対する人間の位置づけは、人間に対しての馬や犬に等しいものとなるだろう。
つまり機械は生命をもっている、もしくはもつようになるのだ。
機械が覇権を握るのも時間の問題である。

 1863年6月13日 ニュージーランド クライストチャーチのプレス新聞記事より

ちなみにこの記事を元にGeorge Dysonさんが
“Darwin Among the Machines: The Evolution of Global Intelligence”という
情報革命や機械の知能について、そして自然とテクノロジーの関係について記した本があります。
日本でも翻訳出版されたら良いのですが。

更に大学の講義用に準備されたチューリングさんの論文の中で以下のような記述があります。

機械が何を言おうとしているかを理解しようとするなら、やるべきことはたくさんある。
すなわち、機械によって設定された基本的な知性に人間は置いて行かれないようにがんばるしかない。
ひとたび機械が思考を始めたら、我々人間の脆弱な能力を超えるのに時間はかからないだろう。
機械は不死であることに疑問の余地はなく、機械は彼らの知恵を磨くために話し合ったりもできるだろう。
従って何らかの段階で丁度サミュエル・バトラーがエレホンの中で描いたように機械が実権を握ることになると考えねばなるまい。

チューリングの1951年の論文 “ Intelligent Machinery, A Heretical Theory(知的機械、その異端論) ” 6ページ目より

チューリングさんもエレホンを読んで大なり小なりの影響を受けたことが伺えます。

機械に実権握られちゃったら困るんですけどね・・・(。・ × ・)
私どものようなパソコンの修理業者はどうなるんでしょう。
「 CPUの辺りが熱を持ってつらいです。早く診てください 」 
「 いや、こちらのHDDの交換を先に!早く!私のデータが!! 」 
と、騒がしい病院の待合室みたいになっちゃうんでしょうか。
それか「 自分で自分を直すからお前らはもういらん 」 とお払い箱になっちゃうのかもしれません。
うう、こっちのほうが有り得る気がする。

ケビン・ウォーリックさん(チューリング・テストの項で
 人工知能ユージンくんを褒めていた副学長さんです)が言うように、
『 マシンに追い抜かされたくなければ自分自身の性能を上げるしかない。
 人間の限界を機械によって克服して能力を向上させる 』 しかないのでしょうか。
ケビンさんは人類初のサイボーグと言われる研究者さんで
『 ただの人間でいたいと望むことは有り得ない 』 とまで言い切るひとなので、
いざ人工知能が人類を支配するような局面が来たら全人類の人体改造もやむなし、とお考えなのかもしれません。
私もちょっと興味はあるのですが、さすがにキカイダーみたいになるのはイヤだなあ、と思います。
機械帝国みたいなのもなあ・・・
なんとか素子さんみたいな、それがダメならせめてバトーみたいになりたいです。
でも人間のままでドロッセルお嬢様に支配されるのも悪くないような。

そんな悲しい妄想はさておいて、チューリングさんの言う
『 何らかの段階 』 というのが技術的特異点(シンギュラリティ)です。

技術的特異点 テクノロジカルシンギュラリティ

数学者ヴァーナー・ヴィンジと、発明者でフューチャリストのレイ・カーツワイルが提唱した概念で、
人類技術が生み出したもの、主にコンピュータが、人類のコントロールを超えて急激に進化し、
その振る舞いや行く末が人類には推測もできなくなるタイミングのことを指します。

Every man takes the limits of his own field of vision for the limits of the world.

—— 誰もが自分の視野の限界が世界の限界だと思い込む。

ドイツの哲学者 Arthur Schopenhauer (アルトゥル・ショーペンハウアー)



この、人が思う『 世界の限界 』=人類の生物学的限界を超えて科学技術の進展が加速すると、
その先に人類技術の進歩予測が通用しなくなる未来が来る、ということですね。
ざっくり言えば、コンピュータの進化がすごすぎて、目の前のコンピュータが
一体何をやってるのか推測もできないくらいの技術進展が来るというのです。
まさにスーパーフィクション、と思ってしまいますが、シンギュラリティを研究する学者さん達によると
このまま順調に技術が進歩すれば2045年くらいに技術的特異点が来る、らしいですよ。
意外と近いことにびっくりしますね。

人間の脳の動き、神経伝達をコンピュータの中で再現することは現状ではほぼ不可能だと言われています。
その細かさ、複雑さを模倣してアルゴリズムとしてコンピュータに搭載しようと思うと
何万台ものスーパーコンピュータが必要になるので、まあ出来ないことはないけれど
あまりにも現実的でない、だからほぼ不可能、ということなんですね。

しかしコンピュータ部品やアルゴリズムの進化によってこれが実現可能なレベルにまでなれば、
人間が成長や学習によってどんどん賢くなることができるように、
コンピュータは自分のアルゴリズムを自分で書き換えてどんどん賢くなるかもしれません。
工場機械を勝手に改良して、より高性能な部品を自分のために造るかもしれません。
その時には収穫加速の法則が働いて、意外とあっさり
コンピュータは人間を超えた思考能力を手に入れると考えられます。
そうなると確かに人間にはコンピュータが何をしているのか推し量ることも出来ないでしょう。

ちなみにこの技術的特異点を提唱しているレイ・カーツワイル博士は
収穫加速の法則 (The Law of Accelerating Returns) というものも提唱しており、
技術革新のスピードは直線的なものではなく、加速度的なものになると述べています。
これは技術の面だけではなく様々なものの進化に当てはまり、また
得られるもの(収穫)は速度だけではなく効率、コストパフォーマンスなども
指数関数的に成長していくと言われています。

例えば地球と人類の歴史でざっくりとですが考えてみましょう。

【 約2億年前 】 恐竜が生まれる
【 約6500万年前 】 恐竜が滅ぶ
【 約20万年前 】 ホモ・サピエンス(現在のヒト)の出現
【 約7万年前 】 衣服を着るようになる
【 約5万年前 】 洞窟に壁画を描き始める
【 約1万年前 】 イヌを飼い始める、農耕開始、金属精製も開始、日本は縄文時代
【 約5000年前 】 古代エジプト文明、メソポタミア文明などの文明が現れる
【 約3000年前 】 青銅の製造技術が日本に伝わる
【 約2000年前 】 日本は弥生時代
【 約1600年前 】 ローマ帝国が栄える、邪馬台国が現れる 
【 約1000年前 】 清少納言の『枕草子』、紫式部の『源氏物語』が著される
【 411年前 】 江戸幕府が開かれる
【 327年前 】 ニュートンが万有引力を発見
【 約300年前 】 産業革命が起こる
【 245年前 】 ジェームズ・ワットが新方式の蒸気機関を開発
【 215年前 】 ボルタが電池を発明、直流電気を考案
【 100年前 】 第一次世界大戦が始まる(4年後終戦)
【 78年前 】 チューリングさんがチューリング・マシンを考案
【 75年前 】 第二次世界大戦が始まる(6年後終戦)
【 58年前 】 人工知能研究が学問分野として確立
【 45年前 】 アポロ11号が月に着陸
       日本で初めて『 パーソナルコンピューター 』という言葉が使われる
【 30年前 】 電話番号で送信できるショートメッセージサービス(SMS)が誕生
【 29年前 】 日本初の携帯電話・ショルダーホン発売
【 25年前 】 世界で最初のノートパソコン Dynabook J-3100SS を東芝が発売
【 10年前 】 GoogleがGmailサービス開始、PSP発売
【 7年前 】 AppleがiPhoneを発売
【 現在 】 人工知能ユージーンくんがチューリング・テストを突破


適当に歴史の出来事の中から抜き出してみましたが、
近代になるほどに進化速度が尋常じゃないのがお分かりいただけると思います。
ヒトが出現してから服を着るまでの13万年間は一体なんだったんだろう・・・(;-A-;)
こうしてみると、確かに収穫加速の法則というものはあるのかもしれない、
なら技術的特異点も2045年に来てもおかしくないのかもしれない・・・と考えさせられます。

チューリングを描いた作品

ここまでお付き合いいただいた方ならお分かりいただけたと思うのですが、
チューリングという人物はとてもドラマチックな、かつ悲劇的な人生を歩んだように思えます。
そのため色々な小説や映画の題材として取り扱われることもあり、
ハヤカワSF文庫から出ている『 クリプトノミコン 』の主役の一人である暗号解読者は
チューリングの大学の同級生だったという設定ですし、
チューリングの在籍したイギリス軍の暗号解読センター “ブレッチリー・パーク” を舞台にした小説、
そしてその小説を原作とした映画『 エニグマ 』も有名です。

新しいものではベネディクト・カンバーバッチが
チューリングを演じる映画『 The Imitation Game 』があります。
イギリスでは2014年11月21日公開予定、日本では2014年12月に公開予定となっています。

(2014年12月10日追記)
予定よりちょっと遅れ、日本では2015年3月に東宝系で全国ロードショーが決定したようです。
予告動画がYouTubeで公開されていますのでご参考に ⇒  英語版そのいち 英語版そのに
日本語版『 イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 』予告動画
イミテーション・ゲーム 日本語公式サイト

ベネさんは『 SHERLOCK 』という、シャーロック・ホームズが現代に生きていたら、という内容の
イギリスBBCのテレビドラマでホームズを演じて人気爆発。
『スター・トレック イントゥ・ダークネス』などの人気作品にも出演していますし、
『 SHERLOCK 』は日本でもNHK BSで放映されたのでご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。
スマホやGPSをフル活用するホームズ、というのが新鮮で面白い演出でした。
ベネさんも可愛らしくカッコ良い方なので、どんな風にチューリングを演じるのか楽しみです。

不遇の天才発明家 ニコラ・テスラ

世界を大きく変えるほどの発明をしたにも関わらず報われない一生を送り
悲劇の天才として描かれる偉人としてもう一人、ニコラ・テスラが居ます。
テスラはクロアチア出身のセルビア人で、後にアメリカに渡った電気技師、物理学者、発明家です。
1856年7月10日生まれ、1943年1月7日没。

テスラさんがどんな人物か、そして彼がどんな発明をし、どんな人生を送ったのかを
簡単に(といっても長くなるのですが)ご紹介したいと思います。

まずは電気のお話から

テスラさんを語る上で避けて通れないお話なので、ちょっと面倒なのですがお付き合いください。

電気には直流( DC )と交流( AC )、2種類の流れ方があります。
皆さん学校の授業で乾電池に豆電球を繋いだり、乾電池をいくつか並べて繋いだ
実験をしたことがあると思うので、その辺りのことを思い出してみてください。

ノートパソコンの電源コードにくっついている四角いあいつをACアダプターと呼びますが、
この名称も『 交流( AC ) 』からきています。
ちなみにオーストラリアのハードロックバンド『 AC/DC 』は
電化製品の裏に書かれていた交直両用を示す文字から名前を付けています。

直流とは、電気が流れる際の向きや強さ(電流)や勢い(電圧)が一定に保たれる電流のことです。
交流とは、一定の周期(時間経過)で電流や電圧が変化する電流のことです。

このため電流を波形で表すと、直流は直線になり、交流は波線になります。
直流では一定の向きにしか流れないため、乾電池のプラスからマイナスに流れる電気の向きは
変えることができません。
そのため、乾電池の向きを指定されているプラスマイナスに合わせないと機器は動きませんね。
交流ではプラスとマイナスが周期的に入れ替わるので、極を気にする必要がなく、
そのためコンセントにプラグを挿すときに向きを気にする必要がありません。
更に交流であれば電圧を変える(=変圧)が簡単に行えるため、
発電所で作られた電気を、エネルギーのロスが少ない高電圧の状態で送電し、
家庭に届ける時点で安全な電圧に変換して使用することが可能です。
電化製品は基本的に直流で動くので、安全に運ばれてきた交流電流を
ACアダプターによって直流に変換して使っています。

直流と交流、それぞれが電気を使った現代の暮らしには欠かせないものであり、
中でも交流の働きによって電気産業が栄えたといっても過言ではないでしょう。

電気産業の始まり

1799年にアレッサンドロ・ボルタが電池を発明して直流電気の歴史が始まりました。
1848年頃からジョゼフ・スワンが白熱電球の発明を始め、
1860年までには試作品を実際に発光させることに成功しています。
1878年にはスワンさんが白熱電球の特許を取り、その一年後にはかの有名な
エジソンが『 スワンのものより長寿命で実用的な白熱電球 』で特許を取ります。

ここで「 ・・・え? パクリ? 」 と思われる方もいらっしゃると思います。私も思いました。
しかし昔は今より著作権的なものも緩かったのかもしれませんし、
発明ラッシュで商品競争も激しかったでしょうから、
より早く実用化・商業化したもの勝ちだったのかもしれませんね。

テスラ、エジソン電灯に就職。そして退職

そんなこんなでエジソンは数々の発明(?)を元手に直流電気を商売にして成功を収めます。
アメリカのエジソン電灯本社だけではなく、パリなどにも支店を持ち、ガツガツ電気を売っていました。
そんな中、このお話の主役であるニコラ・テスラは1882年にパリのエジソン電灯に就職したとされています。
(このへんは当時の資料が少なく曖昧なようです)

エジソン電灯で働く前から交流電流を考えていたテスラさんは
優秀な技術者として会社に貢献しますが、正当な報酬が支払われず、
イラッとしてパリのエジソン電灯を退社します。
しかしこの時、エジソンの右腕と呼ばれたチャールズ・バチェラーがその技術を惜しみ、
アメリカにいるエジソンへの紹介状を書いてくれました。
その紹介状に書かれていたとされる文言がこちら。

「 私は偉大な人間を二人知っています。一人はあなたエジソンで、もう一人はこの若者です。 」 

この時点でエジソンは電気事業の成功者、かたやテスラさんは無名の若手技術者です。
テスラさんに対するバチェラーさんの評価の高さが伝わりますね。
この紹介状を持って、テスラさんはニューヨークにあるエジソン電灯本社へ向かいます。

テスラ
エジソンさんは小卒で苦労しながらも沢山の偉業を達成しているんだもんな。
エジソンさんの功績に興味があって英語を勉強したんだし、そんな人のところで働けるなんて嬉しいなあ。
せっかくバチェラーさんに紹介状も書いてもらったんだし精一杯がんばろう!

元々エジソンに対して敬意を持っていたと思われるテスラさんは意気揚々と新天地で働き始めます。
けれど残念なことに、エジソンはテスラさんに対して良い印象を持たず
(才能がありすぎる若者なんて部下にしたくないタイプだったようです)
更にテスラさんの提唱する交流は、今までエジソンがガツガツ儲けてきた直流と
それに関わる機器や工場、発電施設を根底から崩しかねないものでした。
そしてついにエジソンはムカつく部下であるテスラさんに挑戦状を叩きつけます。

エジソン
そんなに言うなら直流用の工場装置を交流で動かしてみろ!
出来たら5万ドル払ってやるよ。出来ないだろうけど。

5万ドルは当時の貨幣価値だと今の日本円で1億1千万円ちょっと?
そこで己のプライドと多額のボーナスのためテスラさんは頑張ります。
頑張ったらあっという間に交流に出来てしまいました。なんということでしょう。

テスラ
できました!ボーナスください!
エジソン
(やばい、絶対できないと思って言ったのに)
テスラ何言ってんの? え? あれ信じちゃったの?
HAHAHA! アメリカンジョークだよ、アメリカンジョーク!これだから冗談の通じない田舎者はイヤなんだよ
テスラ
(このやろおおおおお!!)
・・・会社辞めます

こうしてエジソンとテスラさんの仲は決裂し、電流戦争と呼ばれる戦いが始まります。
以降、二人の間の深い深い溝は埋まることはありませんでした。
頑なにエジソンが直流しか認めようとしなかったのは
貧しい出身で学が無く、ひたすら実験を繰り返して成功を目指してきたエジソンには
数学的・物理的な理解が必要である交流の概念が理解できなかったため。
そして更に交流を認めてしまうと全ての直流方式の施設を建て直す必要があり、
商売人としてはそんな余計な損失を出したくなかったためのようです。

電流戦争

エジソンの元から去った後、テスラは自分の会社を立ち上げ、交流電流の研究を続けました。
このアーク燈製作会社は折からの不況の煽りで倒産してしまいましたが、
1年ほど日雇い労働でなんとか生活し、1887年にはジョージ・ウェスティングハウス・ジュニア
(大実業家で発明家、エジソンのライバル)の協力を得てウェスティングハウス・エレクトリック社を設立。
交流電源の特許を取得してウェスティング社に販売する形にして
交流送電を使う電力事業を拡大させていきます。
そしてやがて「 あれ?交流のほうが良いんじゃないの? 」 と世間が認め始めました。

エジソンはそれがどーーーーっしても我慢ならず、野良犬や野良猫を片っ端から捕まえてこさせて
新聞記者や賓客の前で交流電流を使って感電死させる実験を繰り返します ( !!! U・x・U )
最終的には象を大衆の前で交流電流で感電死させて見せました ( ! (´;ω;`) )
それから絞首刑に代わる処刑方法として交流電流を使った電気椅子を作り実際に刑を執行させます。
しかし一番最初は上手く電流が流れず、死刑囚に重症を負わせながら8度もやり直したとか( ・・・!(;-A-;) )

エジソン
テスラの交流電流はこんな風に人を殺すんですよ~怖いでしょう? 交流は使いたくないでしょう?
ちなみに『 処刑される 』ことを『 ウェスティングハウスされる 』って言うのが現代の流行っすよ(嘘)

と世間の人々にマイナスイメージを与えて印象操作を行う、
いわゆるネガティブ・キャンペーンをしたんですね。
もちろん皆さんご存知の通り、感電したら危ないのは直流も交流も同じなのですが
電気に初めて触れた人々からしてみたら、目の前で動物が死んだこと、
処刑に使われたということ、そしてエジソンの言うことが全て。
しかしここでエジソンの悪巧みは効き目がありすぎて、世間の人は
「 電気って怖い。昔ながらのロウソクとかガスとか油とかでいいよもう 」 と思うようになり
電気事業そのものの妨げになったのだとか。

もちろんテスラさんもやられっぱなしではなく、自分の体に交流電流を流して(表皮効果)
管理された電気は危険ではないことを主張して民衆から支持され、
シカゴの万国博覧会には交流システムによるモーターと二相型の発電機が展示されました。
更にウェスティングハウスさんと協力してナイアガラの滝を使った水力発電に成功したことから
直流 VS 交流の電気事業戦争は交流の圧倒的勝利に終わります。

(2015年5月追記)
このテスラさん VS エジソンの電流戦争をモデルにしたボードゲームが発売予定だそうです。
詳しくは週間アスキーさんの記事をご覧ください。
発売元のページはこちら Tesla vs. Edison by Artana LLC — Kickstarter
ちょう欲しい。おもちゃメーカーさん、日本語版を出してくれないでしょうか・・・!

報われない才能と、幻のノーベル賞

電流戦争が交流の勝利に終わり、テスラさんが持てはやされるようになったかというとそうでもなく、
エジソンが流し続けた悪い噂により世間の目は冷たいままでした。
更にウェスティングハウス社の技術陣の中でも一人孤立して退社し、
後に研究のスポンサーになってくれたジョン・ピアポント・モルガンも、
4年ほどでテスラさんへの融資を打ち切ります。
本当に不運というか、人付き合いが下手というかなんというか。

スポンサーのモルガンさんに融資を打ち切られ数年が経った頃。
自由に研究に使えるお金もなく生活も苦しかった1915年、
テスラさんはノーベル物理学賞の受賞候補となりました。
ノーベル賞の賞金さえあれば、生活の向上はもちろん、研究を進める足がかりにもなります。
ノーベル賞受賞の名声から新しいスポンサーも付くかもしれません。
しかしテスラさんは結局、ノーベル賞を受賞しませんでした。
この理由は公式には一切発表されていませんが、だた一つの事実として
この年のノーベル物理学賞は、テスラさんとエジソンの二人に、同時に与えられようとしていました。
・・・選考委員の人たちも空気読めよ。 と思ってしまいますね。

もうこれ以外に名誉と軍資金を得るチャンスを自ら断る理由がありません。
テスラさんのプライドが、エジソンとの同時受賞などという
『 不名誉 』を許せなかったのではないでしょうか。
この後、1930年代にもう一度テスラさんは受賞者候補となっていますが、この時も受賞を辞退しています。
ちなみにエジソンも受賞していません。
二人とも長い長い戦いを続けて意地になっていたのかもしれませんね。

更に1916年、テスラさんの元に米国電気工学協会から
エジソン勲章(エジソンメダル)の授与が打診されました。
エジソン勲章は
『 偉大なるエジソンくんにちなんで、電気電子工学で目覚しい功績をあげたひとに贈ります! 』と
エジソンの友人たちが作った賞です。

・・・お前らみんな空気読めよ!! とテスラさんでなくても思うはず。

当然この受賞をテスラさんは断ります。
(でも今でも受賞者一覧にテスラさんの名前がある辺り、だいぶ押し付けがましい賞のような)
その時、協会員に対してテスラさんはこんなコメントをしたそうです。

私に名誉の勲章をくださるということですが、それを上着につけて
あなた方 協会員の前で得意げに見せびらかせばよいという事ですか?
あなた方は私の体を飾り立てるばかりで、功績を認められそこなった私の頭と
その画期的な発明には何も与えてくださらない。
今日、あなた方の協会があるのは、おおかた私の頭とその産物が
下地を与えたからだというのに。



もうかなりイラついてますね。当然です。
私なら川の真ん中に棒を立ててエジソンと協会員を縛り付けて
受賞メダルで水切りをしてぶつけてやりたいくらいムカつきます。
これが火曜サスペンスや相棒ならそろそろ誰か人死にが出ているレベルです。

一方その頃エジソンは

テスラさんとは反対に、エジソンは相変わらず他人の発明を上手く改良したり、
上手く実用化して大々的に宣伝したりして地位と富と名声を得ていきます。
『 発明王 』とは言いますが、どちらかと言えば『 改良王 』なんですよね。

もちろん、発明されただけで世間に認知されていなかったものを
改良して人の役に立つように、誰でも使えるようにするということも充分以上にすごい事です。
一瞬で切れる電球と、長期間使える電球ならもちろん長期間使える方が有用ですし、
発電施設の整備や、それを生かした電化製品を流通させてエジソンが事業者として大成功したことは事実です。
しかし人の発明を改良していく中で 『 訴訟王 』 と揶揄されるほど
数多の訴訟を起こし起こされていたようですし、この一連のテスラさんの件を思うと、
私の個人的感情としては『 エジソン・・・ あくどい。姑息。キライ (=ФωФ=) 』となってしまいます。

壮大な構想・世界システム

電気だけでなく無線に対しても意欲的に研究していたテスラさんは
高周波変圧器テスラ・コイルを生み出し、大気上層の伝導層を利用する無線通信の構想を抱きました。
遠距離どころか近距離の無線通信さえも誰も成功していない時代に
全世界を繋ぐ無線を考えていたんですね。
更に、無線を使って交流電流を送れたら送電線もいらないんじゃないか、という
とんでもないスケールのシステム構築を考え始めます。
テスラさんはこの無線通信による交信や電信のシステムを
世界システム ( World Wireless System ) と呼び、その実現に向けて邁進していきます。

1905年には世界システムの根幹となるウォーデンクリフ・タワー(巨大なテスラ・コイルの塔)が
完成し、実験ではニューヨークからロサンゼルスまで電気が発信されました。
テスラさんが夢見た、どこにいても誰にでも、無料で自由に電気が使える
というシステムの第一歩でした。
しかしこれもモルガンさんというスポンサーの引き上げや、あまりにも莫大な研究費、
一般には受け入れがたい荒唐無稽とも思える壮大な内容が立ち塞がり研究途中で頓挫してしまいます。
そして後の1917年、アメリカが第一次世界大戦に参戦し、
ウォーデンクリフ・タワーは『 爆撃の良い的にされるから 』という理由で撤去されてしまいます。

ちなみに2014年現在では、『 Qi(チー) 』と呼ばれる
電子機器の無接点充電互換性(ワイヤレス給電)の国際標準規格が存在しています。
Qi ロゴ 【 Qi マーク 】
このロゴが付いている機器なら、スマホでもデジカメでも
専用パッドの上にポンと置いておいたら勝手に充電してくれるのです。
今の充電器とそんなに変わらないような気もしますが、
充電器を挿して充電していると、差込口が段々グラついてきて壊れることがあるので
その心配が無くなるのは嬉しいですね。

更に、アメリカのベンチャー企業・Ossia社( オシア ) が開発した
空中送電技術『 Cota ( コータ ) 』が2015年には実用化される予定だとか。
最大で30m の距離にも電気を飛ばして充電が可能。
日本では人体への影響の心配、法律の壁、電気会社の横槍、などなど問題が山積みのため、
実用化されないか、されたとしても一部施設だけになってしまいそうなのが残念です。

約100年前に考えられていた世界システム。
それがほんの少しだけ現実になってきている今の光景をテスラさんに見せてあげたいです。

テスラの晩年

才能とアイデアはあってもそれを現実にするすべが無い。
そんな状況の中でテスラさんは生活面でも精神面でも追い詰められていったのか、
変わり者、というかもう完全に病的な生活を送るようになりました。
潔癖症が酷くなり、細菌が気になるあまり人と握手もできず、手袋も数回で使い捨て、
食器を紙ナプキンで磨きに磨いてから、きっちり秤で量を計った食事でなければ食べず、
日よけを下ろしてずっと暗闇で研究に没頭します。
更にはオカルト、錬金術にも傾倒して怪しげな研究をするようになりました。

元からあまり人付き合いが得意でなかったのが完全な人間嫌いになり、
生涯独身で鳩が友達の余生を送り、マンハッタンのホテルの一室で孤独死します。
発明に邁進し、世間と上手く折り合えずに挫折し、それを繰り返した86年の人生でした。
190cm以上の長身かつイケメンで、8ヶ国語を操り、音楽や哲学なども得意で
一日4時間の睡眠でも充分で、運動神経も良い天才だったというのになんて勿体無い。
(鳩がいればそれで充分、妻などいらん!とテスラさんは満足していたようなのでこれは大きなお世話ですが)

メディアによるマッド・サイエンティスト像

テスラ・コイルがアメリカ軍の怪しげな実験(フィラデルフィア実験)の基となったことや、
晩年、一般人からは狂気としか思えない奇想天外なアイデアを語っていたことから
テスラさんはマッド・サイエンティストとして都市伝説の番組などで取り上げられたりもしますね。
私もオカルトや都市伝説は好きなので、そういった番組や本をよく見ますが
テスラさんを面白おかしくマッド・サイエンティスト扱いするばかりで、
数々の功績には触れないという構成のものは如何なものかと思います。

フィラデルフィア実験の真相

フィラデルフィア実験は、第二次世界大戦の最中である1943年に
アメリカ海軍によって行われた大掛かりな軍事実験です。
レインボー・プロジェクトと呼ばれていた軍事プロジェクトの一環で、
テスラ・コイルを使って強力な磁場を生み出し、それを地球が持つ磁力と相殺させれば
軍艦はレーダーに映らなくなる・・・はず。という兵器のステルス化(不可視化)を狙ったものでした。

当時テスラさんは国に徴集され、テスラ・コイルを用いた高周波装置開発、
そしてそれを利用した軍事兵器の開発を行っていました。
しかし元々扱いの難しい高周波装置を、技術の習熟もならない内から
無闇に巨大にしたり複数を連結したりすれば人体に悪影響を及ぼすことは確実です。
もし自分が巨大な電子レンジに放り込まれたら、と考えると
その恐怖がお分かりいただけるのではないでしょうか。

テスラ
実用化しようとすれば確実に研究員や海兵が危険です。
こんな研究もうやめましょう!
偉い人
ダメ。これ成功したら戦争で物凄い有利だから。がんばれ
テスラ
・・・そっちがその気なら、私にも考えがあります

この時からテスラさんは研究をサボります。
研究が進まない限りは人体実験の段階まで進まない、ということでひたすら上手にサボります。
1942年、ついにテスラさんはレインボー・プロジェクトの総指揮から退き(退けられ?)
ジョン・フォン・ノイマン博士が後を引き継いで研究を続けました。

ノイマンさんもこれまた凄い研究者で、ノイマン型コンピュータという最初期のコンピュータを作り、
(これについてはそれまで存在した他人の理論を元に組み立てたという話ですが)
数学、物理学、気象学、計算機科学、経済学、心理学、政治学、それぞれの分野で多大な功績を残した人物です。
あまりに人間離れした頭脳明晰さに『 悪魔の頭脳 』と称され、
死後には 『 彼は人間の振りをするのが非常に巧い悪魔だったが、
余りに上手過ぎて自分を人間だと思い込んでしまった 』 と冗談半分に噂されるほどでした。
人類史上で最高のIQ とも称される天才ですね。
原子爆弾の開発にノリノリだった上に、原爆を落とす際には京都に落とそう、と
進言していたのが日本人としてはかなり引っ掛かるところですが。

そんなノイマンさんも開発を引き継いだ後、当然その危険性を危惧します。
どうにか人体実験だけでも延期させようとするものの、軍の命令には逆らえず
1943年、ついにテスラさんとノイマンさんが共に恐れていた人体実験が行われてしまいました。


竣工したばかりの真新しいキャノン級護衛駆逐艦エルドリッジと、その乗組員である海軍兵。
実験開始とともに、船内の電磁波発生装置のスイッチが入れられ、強力な磁場が発生するとともに
海から現れた緑の発光体がエルドリッジを包み、艦体は浮き上がり、
不意にその輪郭がぼやけたかと思うと消えてしまった。
レーダーから消えたのではなく、肉眼から消えたのだ。

見守っていた関係者が慌てているその頃、エルトリッジは2,500km以上も離れた
ヴァージニア州ノーフォーク沖に現れており、
またその次の瞬間には元のフィラデルフィアに戻り、皆の前に現れた。

関係者たちは驚愕しながらも実験が思った以上の成果を挙げたと喜ぶが、
実際の艦内では、ある者は体が突然発火し、またある者は体が溶けるように船の甲板と一体化し、
一瞬で凍りついた者も居れば、半分だけ透明人間になった者もおり、さながら地獄の様相を呈していた。
そして実験結果は行方不明・死亡16人、発狂者6人という大惨事となる。
アメリカ海軍はこの事実を隠蔽し、今日に至るまで実験の詳細を公表していない。




——-というのが、オカルト話として有名なフィラデルフィア実験です。

オカルト好きの心をくすぐる、不思議で奇妙でちょっと怖い、絶妙な匙加減のお話です。
でもこんな事件があったなら、どう考えても隠蔽は無理ですよね。
人の口に戸は立てられず、まして戦時中の混乱もある時期です。
軍のお力でその場をなんとか凌いだとしても、後々の遺族の申し立てやなんかで
資料公開くらいはあるでしょうし、これを生かした新兵器がアメリカで生まれたという話も聞きません。

という訳で実際のフィラデルフィア実験の内情については、私が個人的にお邪魔しているサイト、
オカルト・クロニクル様に詳しい記事がありますので是非ご参考に。
  (私はオカクロ様の記事が大好きです! ついでで申し訳ないのですが
   日頃楽しませていただいている感謝を込めてここで表明しておきます。)

地球を割ろうとするマッド・サイエンティスト?

テスラさんは高周波振動の発生装置も作りました。
目標物の共振周波数を測定し、装置の出力を上げて共振を発生させれば
とても強大なエネルギーにすることができるとしています。
「 理論上はこれで地球も割れる 」と言ったそうです。
あくまでも理論上は。

テレビで発声の振動をワイングラスと共振させて割る
パフォーマンスをしている方を見かけたことがありませんか?
(あれに憧れてたまに一人で練習しているのは私とあなただけの秘密です)
何の仕掛けもない人間のノドと声でも、鍛えれば共振の力でグラスを割ることができるのです。
高周波で振動を生み出す装置なら、より巨大に、より出力を上げればそれは地球だって割れるでしょう。
・・・あくまでも理論上は。

これが何をどう間違ったのか
『 テスラは地震兵器を作って地球を割ろうとしていた 』
といった風に語られていることがあります。
少しテスラさんのことを調べてみれば、そんな何の役にも立たない上に
面白くも無さそうな研究をするひとでないことくらい分かりそうなものだと思うのですが。

ちなみに現代でも高周波振動は色々と役に立っています。
高周波振動によって生み出されるエネルギーを切断のパワーに変える刃などが
金属掘削や金属加工の分野で生かされていますし、
もっと身近なところで高周波といえば女性には美顔器でしょうか。

テスラさんの数々の発明や、その用途のアイデアからすると
例え一般人からどんなに奇妙に思え、狂気の沙汰のように見えたとしても
本人はただひたすらに『 人の役に立つ、すごいものを作ろう! 』 と
考えていただけのような気がします。

改めてテスラの功績に目を向けてみると

一般的な偉人伝では、特に子供向けでは当然ながら電流戦争に至るお話などは
まともに描かれないので意外にご存知ない方も多いのですが、
エジソンを讃えるならまず先にテスラさんを讃えてあげてほしいなあ、と思います。

現在に至るまで電力の送電方式は大半が効率が抜群に良い交流、
つまりテスラさんの考案したほうが採用されているのです。
直流だと町中に無数の発電所を建てないと電気が家庭に行き渡りません。

現在は彼らのものかもしれないが、未来は私のものだ。

ニコラ・テスラ



この言葉のとおり、テスラさんは交流の有用性によって
自分の死後もエジソンとの争いに勝利し続けていると言えるでしょう。

そして更にテスラさんが自ら生み出し、特許を取った発明は実に1600にも上ります。
太陽熱発電(最近改めて有用性が見直されています)、
放電照明(蛍光灯が光るのはこのおかげ)、
点火プラグ(バイクや車についている)、
同調回路(テレビやラジオに不可欠な回路)、
無線トランスミッター(リモコンや携帯電話があるのはこのおかげ)、
テスラコイルやテスラタービン(現在でも様々な機器で使用)、
X線発生の基本原理(手柄は医療機器にしたレントゲンさんに取られた)


などなど。その他にも色々発明したテスラさん。

もちろんそんな素晴らしい功績を残したテスラさんですから、全く評価されていないということは無く
アメリカのテスラモーターズがテスラさんに敬意を表して社名にしており、
出身地であるセルビアでは100ディナール(117円くらい?)紙幣にテスラさんが描かれています。
他にベオグラード・ニコラ・テスラ空港(セルビアの首都ベオグラードにある国際空港)、
ニコラ・テスラ博物館(ユネスコ記憶遺産に指定されているニコラ・テスラ関係文書もここに)
ニコラ・テスラ火力発電所(日本が政府開発援助を行っています)、などがテスラさんの名前を冠していますね。
他には磁束密度の単位 「 テスラ 」に名前を残しています。

参考: セルビアにお住まいの日本の方のブログ記事
 ⇒ Serbian Walker『 ニコラ・テスラ博物館 』
   セルビアに住む方や文化についても分かりやすく丁寧に書かれていらっしゃるので
   是非テスラ博物館以外の記事もご覧ください。

更に参考: カナダにお住まいの日本の方のブログ記事
 ⇒ Serena様の記事
   このテスラさんの銅像かっこいいですね~素敵なお写真です(・∀・*)
  
  ( ブログ著者様へ;リンク禁止等の記述がございませんでしたので、
            勝手ながらリンクを貼らせていただいています。
            問題がありましたら即時対応いたしますのでお手数ですがこちらまでご一報ください )

Web上でよく見かけるテスラさんの像は胸像だったり坐像だったりするので、
スラッとしたスタイルが際立つ立像は珍しいように思います。
こちらはテスラさんがナイアガラの滝を利用した水力発電に成功したことから
ナイアガラの滝(カナダ側)のクイーンビクトリア公園内に
テスラさんの生誕150周年を記念し、その人物像と業績をもっと知ってもらおうと設立された像のようです。
ちなみにこの銅像のデザインは公募で選ばれたようで、
応募者の中から選抜された彫刻家 Les Drysdaleさんのデザインが採用されています。
Drysdaleさんいわく 『 mystery that is his mind 』がテーマとのこと。
訳すと 彼の精神こそが神秘 ?とかでしょうか。
足元には交流モーターを模した台座があり、コートを翻して颯爽と歩く姿が
ひらめきと実現力に満ちたテスラさんの才能を表現しているかのようですね。

この像の碑文に書かれた文言は以下のとおりです。

意思の力と自己制御の可能性は私の鮮やかな想像力に凄まじく訴えかける・・・。
最後には私の意思と願望は完全に一致する。
そこにこそ今日 私が達成している成功の秘密があるのだ。
私の想像は現実と同等であった。

ニコラ・テスラ 1915年



生きている間ずっと、テスラさんの脳裏には尽きることのないアイデアとそれを現実にする方法が絶え間なく
湧き上がり続けていたのかもしれませんね。

しかしこうして最近はテスラさんの功績が改めて見直されて銅像が建てられたりしているものの、
一般的な知名度はエジソンに遥か及ばないのがやっぱりなんだか悔しい。
エジソンは 『 20世紀を発明した男 』 と言われていますが
私はその呼称はテスラさんにこそふさわしいと思っています。
だから絶対にエジソンにさん付けなんかしてやらない、という小さな反抗をしています。

チューリングさんといい、テスラさんといい、その才能や功績に対して
あまりにも不遇すぎる人生を歩んでいるのが世知辛いです。
なのでせめて、パソコンを起動させる時とか、テレビのリモコンのボタンを押した時とかに、
今の私たちの生活になくてはならないものを生み出してくれた素晴らしい人物が居たということを
ほんの少しで良いので思い出してみてくださいね。

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