コンピュータにまつわるホリデーロゴとAppleの社名&ロゴの由来

Googleトップページのホリデーロゴの記事でお話したように、Googleトップページに表示される『Google』のロゴが年中行事や偉人の生誕を記念したもの等になっていることがあります。

その中でも今回は、コンピュータの発展に大きな影響を与えた、ロバート・ノイスとアラン・チューリングのロゴと彼らにまつわるお話です。

ロバート・ノイス 生誕84周年

Robert Noyce’s 84th Birthday
ロバート・ノイス

ロバート・ノイスの生誕84周年を記念したもので、ノイスが発明した集積回路(IC)を模したロゴになっています。
集積回路はジャック・キルビー(テキサス・インスツルメンツ社)もほぼ同時に発明していて、どちらが先かと一時期もめた後で和解しているのですが、それはさておきPC修理業者としてこれは外せないホリデーロゴです。

ロバート・ノートン・ノイスは、アメリカの半導体メーカー・インテル社をゴードン・ムーアと共に創業しました。
同社の初代CEOでもあり、 ‘‘ the Mayor of Silicon Valley (シリコンバレーの主) ’’ とまで呼ばれた人物です。
また、インテル創業後すぐにアンドルー・スティーヴン・グローヴが入社し、
初代CEO  ロバート・ノイス
二代目CEO ゴードン・ムーア
三代目CEO アンドルー・グローヴ

彼ら三人がまとめて『インテルの創業者』と呼ばれることもあります。
ノイスの存在は、アップル・コンピュータを起業したスティーブ・ジョブズを始めとした、その後の世代にも大きな影響を与えています。

現在のPC用のCPUにはほぼインテル製が使われており、後はAMD製、更に残りのほんのちょびっとがVIA製です。
ノイスとキルビーが集積回路を発明した1959年から約半世紀が経ちました。
これだけPCが一般化し、研究が進み、技術が進化した先でもインテルの地位は揺らがず、世界第1位の半導体メーカーであり続けています。
そんな企業の礎を築いた三人の名言をそれぞれご紹介したいと思います。

過去にとらわれてはいけない。
そこから離れて何かすばらしいことを始めてみよう。

ロバート・ノイス


我々は、絶えず線幅を細くし、プロセスを複雑化し、ウェハの集積度を高めている。
つまり、1つのチップに詰め込む機能を増やし続けている。

ゴードン・ムーア


我々は人生の大半の時間を仕事に使っている。
仕事が楽しければ、誰でも熱心に働く。
仕事が楽しくなるのなら、できることはなんでもするべきだと思う。
わたしの一番の大切な仕事は、仕事を楽しくすることだ

アンドルー・グローヴ


インテルの主要出資者で会長も務めた アーサー・ロック氏いわく、
‘‘ノイスは発想豊かな夢想家であり、ムーアは技術面の大家であり、グローヴは技術畑出身の経営科学者だった’’ 
その言葉どおり、それぞれ『らしい』名言だと思いませんか?

アラン・チューリング 生誕100周年

Alan Turing’s 100th Birthday
アラン・チューリング
コンピューターの父と呼ばれるアラン・チューリング生誕100周年を記念したロゴです。
チューリングはイギリスの数学者、論理学者、暗号解読者、計算機科学者です。
‘‘コンピュータ界のノーベル賞’’ ‘‘コンピュータ研究者への最高の栄誉’’ と呼ばれる『チューリング賞』は彼の名前が由来となっています。
この賞は計算機科学分野で革新的な功績を残した人物に米国コンピュータ学会から贈られるもので、インテルとGoogleの協賛によって賞金も用意され、毎年受賞者が選出されています。
残念ながら未だ日本人受賞者は一人も居ないので、いつか日本からも受賞者が出ますように…! ( ー人ー)

チューリングの発明

チューリングはある機械が知的かどうか(人工知能であるかどうか)を判定する『チューリングテスト』を考案しました。
また、自身が開発したチューリングマシンにより『アルゴリズム』と『計算』の概念を定式化し、計算機科学の発展に大きな影響を及ぼし、コンピュータの誕生にも重要な役割を果たしました。

チューリングマシンとは

1936年にイギリスの数学者チューリングが考案した計算を行う機械のモデル。基本的な構成はマス目で分割された一本のテープと、テープにデータを書き込み・読み出しする一個のヘッドから成っている。

チューリングマシンはあらかじめ設定された幾つかの「状態」を持っており、その「状態」とヘッドから読み出したデータの組み合わせによって、「ヘッドをテープ上で一マス移動させる」「テープのヘッドのあるマスにデータを書き込む」「『状態』を変更する」のいずれかの動作を行う。その後、移動後のヘッド位置からデータを読み込み、そのデータと新しい「状態」の組み合わせに従って、次の動作を行う。

単純な原理だが、一定の手順に従えば答えが求められるような計算は、理論上すべてチューリングマシンで実行できるとされている。チューリングマシンそのものは理論だけの存在であり、実際に製作されたわけではないが、現在のコンピュータも突き詰めればチューリングマシンの原理に従っていると言える。

IT用語辞典より)



チューリングマシンを模したこのホリデーロゴは、数字の下に並んだボタンによって処理が行われます。
処理を制御(=アルゴリズム)しながら右上のお題と同じ数字の並びにするとクリアです。
操作はクリックによるボタンのオン/オフくらいですが、段々と難易度が上がっていきます。
何度でも失敗できますので、失敗しながらボタンの効果を確認しつつゲームが進められるようになっています。

攻略方法を掲載しているサイトさんもありますが、まずはどのボタンを押すとどうなるかをご自身で確認しながら進めてみてくださいね。
ページ下部の制作裏話に載せられているボツになってしまったデザインも素敵です。

チューリングによる暗号解読

チューリングの功績はこれに留まらず、ドイツの暗号機エニグマの設定を見つけるための機械 bombe(ボンベ) を開発し、エニグマを解読しました。
エニグマの暗号は当時「解読は不可能な難攻不落の暗号」と称されるほどのものでした。
これがチューリングにより解読されたことで、第二次世界大戦におけるイギリスとドイツの戦局は大きく変わったと言われています。

北アフリカ戦において、ドイツのロンメル将軍への補給船団の航路を暗号解読によって知ったイギリス軍はそれを撃沈し、最終的に兵站状況の悪化によって戦線を維持できなくなったドイツ軍はアフリカからの撤退を余儀なくされました。
また、イギリスはドイツの潜水艦Uボートによる補給船団への攻撃に苦しめられていましたが、エニグマの解読によって瞬く間に立場は逆転し、イギリスの補給船団は安全な航路を取るようになり、それだけでなくイギリスはUボートの正確な現在位置を知って撃沈するようになりました。
イギリス側からすれば、チューリングのおかげで失わずに済んだ物資と人命は計り知れないものでしょう。

しかしそこからがチューリングの悲劇。
その類稀な才能と努力により自国に多大な貢献をしたはずが、いざ戦争が終わると、暗号解読の才能が他国のものになることを恐れた政府により厳しい監視が付けられ、更には同性愛者だったというそれだけのことで有罪の判決を受け(当時のイギリスで同性愛は犯罪でした)、その2年後にチューリングは青酸カリを塗ったリンゴを食べて自殺したと言われています。
(追記)そんなチューリングの半生を描いた映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』が2014年に公開されました。
ベネディクト・カンバーバッチとキーラ・ナイトレイの演技も、脚本と演出も良く、機械や数学のことが一切分からなくても楽しめる映画なので、興味がある方はぜひ。

一方ドイツのロンメル将軍も

ロンメルはドイツの名将軍で、アフリカ戦線において戦力的に圧倒的優勢だったイギリス軍をたびたび壊滅させ、畏敬の念を込めて敵軍から ‘‘砂漠の狐’’ と呼ばれていました。
ロンメル将軍もその優れた戦術、司令能力により自国に多大な貢献をしたにも関わらず、ヒトラー暗殺未遂事件への関与を疑われ、家族の命だけは助けることを条件に、ヒトラーの使者より渡された毒薬を飲んで自決しています。
チューリングといいロンメルといい、散々国のために働かせておいて最後にはこんな仕打ち。ひどい。
国や偉い人というのは勝手なものですね。

ちなみに私が小さい頃、ファミコンで『戦車戦略 砂漠の狐』という戦略シュミレーションゲームがありました。
プレイヤー(自分)がロンメル将軍となって戦略を決め北アフリカ戦線を戦うものだったのですが、私がファミコンで遊んだゲームの中でトップ5に入るくらいハマっていました。
ちなみに個人的トップ5の他の4つは『迷宮組曲』、『レインボーアイランド』、『ワギャンランド』、『半熟英雄』です。
…年がバレますね。上のゲームが分かるあなたはきっと私と同世代。

ちょっと(だいぶ)お話が逸れましたが、ここから更に逸れます。
チューリングさんのかじったリンゴと、ジョブズさんのアップルについて。

Apple社の社名およびロゴマーク

アップルのリンゴ
スティーブ・ジョブズが創業したアップル・コンピュータ。
創業から今に至るまで、ジョブズおよび歴代のCEOや技術者達によって
Macintosh、Newton、iPod、iPhone、iPad…
コンピュータ業界の躍進にとって数多の偉大な功績を上げ続けている企業の一つです。

社名の由来として、噂の中でもまことしやかに囁かれているのが
ニュートンが万有引力を思いつくきっかけになったリンゴをイメージした
という説。
実際に一番最初のロゴイラストがニュートンとリンゴの木を描いたものだったので、これが正しい由来だと思っていらっしゃる方も多くいるようですが、ジョブズは最初のロゴのデザインについては『堅苦しすぎる』と気に入らずに新しいロゴに変更しているのでそれが本当の由来である可能性は低いような気がします。

また、現在も使われている右上がかじられて欠けたリンゴのロゴマークについては、
bite(ひとくちかじる、ひと噛みする)とbyte(情報の単位であるバイト)を掛けた
というのが有名な説ですが、私はこれも真実ではないと考えています。

bite → byte ?

コンピュータを動かす0と1を8個(8ビット)で一つにしたものが『1byte』。
00001000とか00100011とかが1バイト、というわけですね。
『byte』という単位は、1956年に Werner Buchholz(ワーナー・バックホルツ)が考案したと言われています。
バックホルツさんはドイツ生まれのコンピュータ設計者で、IBMのコンピュータ開発プロジェクトに携わっていた折に
 「1001001 1000010 1001101・・・8ビット8ビット8ビット・・・っと。
  ああ面倒くさい、大体8ビットで一塊なんだからもうその単位の呼び方決めといたらいいじゃん。
  なんとなく一口ずつかじってるっぽいからbiteでいいじゃん。
  あ、でもbitと紛らわしいから『i』は『y』に変えてbyteにしようぜ」
と決めたのだとか。
(この時、IBMの開発上は6ビットで1バイトにしていたらしいのでコレ↑ はちょっとウソですが)

ジョブズもそれに乗っかった?

さてここで考えていただきたいのが、果たしてあのジョブズさんともあろう者がバックホルツさんの発想をそのままに『 かじるbite と情報単位のbyte 』を自分の会社のロゴにするでしょうか。
私はジョブズさんの知り合いでもなんでも無いので定かではないですが、あの修理屋泣かせな頑固な造りであるMacを見る限り、ジョブズさんはそんな人じゃない気がします。

マッキントッシュの開発の際も、マザーボード基板の回路やチップについて「見た目が美しくない!」とジョブズさんは何度もダメ出しをしたのだそうです。
マザーボードの造りが綺麗だなあ、なんて思うのは、それこそ私共のような修理業者か、パソコンが好きで好きで余さず全てを知りたいマニアな方くらいでしょう。
それにも関わらずジョブズさんは技術者に向かってこう言い放ちます。

When you’re a carpenter making a beautiful chest of drawers, you’re not going to use a piece of plywood on the back, even though it faces the wall and nobody will ever see it.

つまり

お前が美しいチェストを作る素晴らしい職人だったとしたら、裏側が壁に面してて誰も見やしないとしても、そこにちゃっちいベニヤ板を使ったりはしないだろ!(意訳)

物づくりに携わる人間の見本のような理想主義、部下からしたら無茶ぶりに近い完璧主義。
それでこそAppleの現在の隆盛があるわけですが。そんな人がやっぱり人の真似なんてしない気がします。

真の由来とは…?

ではAppleという社名とリンゴのロゴの由来は何なのか。
これについてAppleは公式見解を一切発表していません。
真相は天国のスティーブ・ジョブズのみぞ知る、なのでもう確認のしようもありません。

そしてこの謎については、それらしい物から都市伝説めいたものまで、様々な由来が世間で噂されていますので一部ご紹介いたします。
まずはロゴデザインについて。

アートディレクターのロブ・ヤノフが、ジョブズから新しいロゴデザインを依頼された際に、さくらんぼと間違われないために、一口ぶんの欠けで大きさを分かり易くしただけ
おお、それっぽい。
でも流石に茎の長さ的にも、一つしか無い実の感じからも、さくらんぼとは間違われないんじゃないだろうか。
もう一つ『トマトと間違われないため』というのもあるのですが、ヘタも無いし、実や葉っぱの形で判りそうなものですし。

リンゴのイラストとappleの文字を組み合わせていた初期ロゴではaの左下の丸い部分がリンゴと重なっており、そこからappleの文字をのけてリンゴのイラストのみにした際に「a」の文字と重なっていた部分が無くなって丁度リンゴをかじったような形になった
私はこのリンゴの絵と『Apple』の文字が重なったロゴ、というものを見たことが無いのですが、昔は一時使われていたことがあったりしたんでしょうか。

それでは社名の由来は?

ビートルズのジョン・レノンの妻、オノ・ヨーコの芸術作品に「APPLE」という生のリンゴを使った作品があり、それを見たジョンがふざけて作品をかじったというエピソードから、ジョン・レノンを敬愛するジョブズが『ジョンのように、固定観念に縛られず遊び心のある会社にしたい』とその作品をモチーフにした
これは社名・ロゴの両方の由来を説明できる上に、凄く有り得る…と思わされる由来ですね。
他にビートルズが創設した会社の名前がAppleだったのでそれにあやかって、というものもあります。

後はちょっと面白い由来としてはこんなのも。
創業当時のジョブズがリンゴダイエットをしていたから
これはこれで可愛い由来でいいと思います。
女子高生みたい…とか思ってごめんなさいジョブズさん。
なんか色々こだわりとか体質とかあったんだと分かってはいるんですが。

ちなみにジョブズさんの死後 間もなく出版された自伝『スティーブ・ジョブズ』(著者はウォルター・アイザックソン)の中で

On the naming of Apple, he said he was “on one of my fruitarian diets.” He said he had just come back from an apple farm, and thought the name sounded “fun, spirited and not intimidating.

つまり

Appleの命名について「私は果食主義者で、リンゴはその食事のひとつだ」とジョブズは語った。彼はちょうどリンゴ農場から戻ってきたばかりで、『Apple』という響きは「楽しく元気で、威圧的ではない」と思ったんだそうだ。

という記述があり、最近ではこの説が有力ですね。
ジョブズさんのバイト先がリンゴ農場というのがまず意外でしたが。

しかしこれも、気分屋なジョブズさんがインタビューの時にこう答えただけで、本当のところは別な由来だったのかもしれないし、これほどの大企業の社名とロゴの由来を、この世の誰も知らないというのもなかなかミステリアスで良いと思います。

私としては
チューリングが死んだ時にかじったリンゴをイメージした
という説が社名とロゴ、どちらの由来も説明出来ていますし、更にミステリーっぽくていいんじゃないかなあ、と思うのですが何にせよ真実は藪の中

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