印刷に使われる文字や、コンピューターに表示される文字の書体のことをフォントと呼びます。
中でも、パソコンのOS(WindowsやMac OSなど)に入っているフォントやソフトに付属しているフォントであれば、ユーザーが自由に変更することができるので自分の好みの無料フォントをネット上で探したり、有料フォントを購入したりして自分のパソコンにインストールし、例えばWordでこんなことをしてみたり
Excelでこんなことをしてみたりと
書類をより見やすくするため、あるいはちょっとしたお遊びにも使えるのが文字フォントです。
過去のフォントについての記事でも文字フォントについてご説明しましたが、今回はGoogleさんとアドビシステムズ株式会社さんの共同開発による新しい文字フォント『 源ノ明朝 』が発表されたのでご紹介したいと思います。
誰でも無料でパソコンにインストールして使用することができるので、是非お試しください。
Pan-CJK(汎 中日韓)フォントの “ 源ノ ” シリーズ
2014年7月に 源ノ角ゴシック(ゲンノ カクゴシック) が発表され、それに続いて2017年4月4日に源ノ明朝(ゲンノ ミンチョウ)が発表されました。
最初ニュースで字面を見た時には一瞬「 みなもとのあきとも…源氏にそんなひと居たかなあ… 」とか考えてしまいましたが、それはともかく。
そもそも源ノ角ゴシックとは、Pan-CJK(汎 中日韓)フォントである『 Source Han Sans 』 の和名です。
『 Source 』=『 源泉、みなもと 』 というところから、更に日本語っぽく『 ●●の 』という意味で『 ノ 』 をつけて【 源ノ 】となりました。
Pan-CJK(汎 中日韓)フォントとは、
・日本で使われている漢字とカタカナとひらがな
・主に中国で使われている簡体字(简化字)
・主に台湾や香港で使われている繁体字(正体字)
・韓国語
これらの異なる言語を、同一のフォントを使えるよう、一体感ある表記にしようという試みで生まれたフォント。
台湾の郵便番号・住所・宛名の書き方 でもご説明したように、中華圏で使われる漢字には繁体字と簡体字の2種類があり、国によって使われている漢字が異なります。
大雑把にわけると、私達日本人が普通に(あるいは何となく)読める漢字が繁体字で、私達が読めない変わったデザイン、もしくは簡略化されすぎて何だかよく分からない漢字が簡体字です。
もちろんこの二種類に共通して使われる漢字もあります。
中国とシンガポール(人口の4分の3が中国系)やマレーシアでは簡体字(簡略化された漢字)が使われており、台湾・香港・マカオ・アメリカの華僑などでは昔のままの繁体字が使われています。
例えばこちらは 『 歓迎(かんげい) 』 という漢字を、日本漢字・繁体字・簡体字で入力したものです。
最近はコンビニやデパートの表示でも見かけることが増えましたね。
このフォントは、私がいつもお世話になっている 『 あずきフォント 』です。
手書き風の可愛い文字で読みやすさもあり、とても気に入っています。
しかし日本語対応フォントなので、日本漢字と繁体字は描画できていますが簡体字には対応しておらず、空白❑になってしまっています。
そこで、日本漢字は小塚明朝フォントに、簡体字は仿宋(ほうそう)フォントに、繁体字は明體(Ming)フォントに変えてみました。
ついでに 『 台湾 』 も繁体字の 『 臺灣 』 に変更。
それぞれの言語に合わせたフォントを選べば、漢字も問題なく、かつ文字が綺麗に表示されますね。
しかし、このように異なる言語を異なるフォントで入力すると、文字の書体がバラバラに見えて美しくない、という問題がありました。
サイズも全部同じにしているのに、大きさや余白もズレてしまっていますね。
そこで、とりあえず日中韓の間だけでも同じフォントを使って美しい文章を書けるように、というテーマで生み出されたのがPan-CJK(汎 中日韓)フォントなのです。
源ノ角ゴシックと源ノ明朝の見本
あああ超見やすい。日本漢字でも繁体字でも幅にズレがなく綺麗で読みやすい。
クラッシックでありながらモダン。特にこの明朝の繁体字はサイコーです。
一つずつの文字を手動で調整してくれた、西塚涼子さんをはじめとしたタイプデザイナーさん達に感謝ですね。
フォントの使用許諾
源ノ角ゴシックおよび源ノ明朝のインストールおよび使用は無料です。
ただし、商用利用の場合はライセンス規約に基づき、Adobeとの契約が必要です。
これ以外のフリーフォントであっても、個人利用以外、つまり商用利用には使用制限やライセンス購入の必要がある場合がほとんどです。
デザインや広告にフォントを使用する場合、改変したフォントを販売する場合などは必ず規約を確認し、不明な点があれば権利所有者に確認してください。
ダウンロードページ
それぞれのフォントはGitHubから、もしくはAdobeからダウンロードしてインストールすることができます。
GitHub の方がインストール手順が分かりやすいかと思いますので、以下ではそちらの手順をご説明します。
・Adobeから取りたい、という方はこちらからどうぞ。
源ノ角ゴシック ・ 源ノ明朝
また、共同開発者であるGoogleでも同じフォントを別名でダウンロードすることができます。
・Noto Sans CJK(=源ノ角ゴシック)
・Noto Serif CJK(=源ノ明朝)
源ノ角ゴシック(Source Han Sans)をGitHubからインストール
(Version2.0のリリースを受けて、2018年11月22日にインストール手順を修正しました)
源ノ角ゴシック(日本語説明ページ) にアクセスして【 最終リリース 】をクリック。
ページ中ほどから下の部分をご覧頂いて、お好みのダウンロードファイルを選択してください。
(私のオススメはヒヨコの付いてるファイル2つのいずれかです)
文字の太さについてははこちらをご参考に。
普段 パソコンで日本語以外の文字を入力することがない方は、日本語版のJapanファイルのみ単品でダウンロードすればファイル容量が少なく、ダウンロード時間も短くて済みます。
逆に私のように、台湾のひととメールすることがあるから繁体字は入れておきたい、という場合は台湾版の思源黑體ファイルも入れることになります。
保存されたZIPファイル(データ圧縮ファイル)をダブルクリックして解凍します。
ZIPファイルとは、大量の作り置きカレーを持ち運ぶためにジップロック冷凍しているようなものなので、解凍しないと使えません。
解凍ソフトを持っていない方はこちらをご参考いただいて、お好みの解凍ソフトを入手してください。
・圧縮ファイルと解凍
任意のファイルを選択して【 インストール 】をクリックするとインストールが始まります。
※全部インストールしたい場合は、全てを選択状態にして右クリック⇒インストールで一気にインストールすることができます。
【 フォントをインストールしています 】のウィンドウが消えてもフォントのウィンドウが閉じない場合は右上の×で閉じてください。
インストールが完了すると、OSのフォントフォルダに格納され、対応ソフトで使用できる状態になります。
源ノ明朝(Source Han Serif)をGitHubからインストール
ここから先の手順はゴシックのインストール時と変わりません。
文字の太さについてははこちらをご参考に。
普段パソコンで日本語以外の文字を入力することがない方は、日本語版のJapanファイルのみ単品でダウンロードすればファイル容量が少なく、ダウンロード時間も短くて済みます。
逆に私のように、台湾のひととメールすることがあるから繁体字は入れておきたい、という場合は台湾版の思源宋體ファイルも入れることになります。
保存されたZIPファイル(データ圧縮ファイル)をダブルクリックして解凍します。
ZIPファイルとは、大量の作り置きカレーを持ち運ぶためにジップロック冷凍しているようなものなので、解凍しないと使えません。
解凍ソフトを持っていない方はこちらをご参考いただいて、お好みの解凍ソフトを入手してください。
・圧縮ファイルと解凍
任意のファイルを選択して【 インストール 】をクリックするとインストールが始まります。
※全部インストールしたい場合は、全てを選択状態にして右クリック⇒インストールで一気にインストールすることができます。
【 フォントをインストールしています 】のウィンドウが消えてもフォントのウィンドウが閉じない場合は右上の×で閉じてください。
インストールが完了すると、OSのフォントフォルダに格納され、対応ソフトで使用できる状態になります。
インストール完了の確認と、不要フォントの削除
ちゃんと入ったかな?と確認したい時は、
コンピューター⇒Cドライブ⇒Windows⇒フォント のフォルダを確認してください。
不要なフォントを削除する際も、ここでファイルを右クリックして削除することができます。
インストール後、Excelなどの対応ソフトの中でフォントを使用することができます。
文字フォントのインストールファイル(TFT・OTF・OTC)
基本的にどのフォントでもインストールの手順は変わりません。
ただ、用意されているファイル形式が異なる場合があります。
主なファイル形式はこの3つです。
・TFT(主な拡張子は .ttf )
・OTF(主な拡張子は .otf )
・OTC(主な拡張子は .ttc )
ものすごくザックリ言うと、TTFが古くからある形式で、OTFが新しい形式、更に最新の形式がOTCです。
なので、最近のパソコンやソフトを使っている方ならOTFをインストールして大丈夫ですし、中でも最新パソコンとソフトを使っている方であればOTCでもインストールして使用できます。
逆に少し古いパソコンやソフトを使っている方はTTFしか対応していないかもしれません。
良く分からない、という場合は試しに用意されているファイルを入れてみて使えるかどうか試しても良いでしょう。
源ノ角ゴシックの新バージョン
(2018年11月22日 追記)
11月20日にAdobeから 『 源ノ角ゴシック 』 のバージョン2.0がリリースされました。
香港で多く用いられる繁体字の字形の追加や、中国語の簡体字の調整を多数行ったとのことです。
日本で使われている漢字にも追加を行ったようで、特に話題になっているのが、とても画数の多い漢字 『 ビャン 』 や 『 タイト 』 などの新規追加。
今回初めて源ノ角ゴシックを入れる方はもちろん、既に源ノ角ゴシックをインストールしている方も是非、新バージョンを追加インストールして使ってみて下さい。
これが『 ビャン 』(画数は58画)。
ビャンビャン麺という、主に中国の陝西省のあたりで一般的に食べられている幅広の麺を表す時に使われます。
中国でも漢字辞典に乗っていないくらい滅多に使われない漢字なので、普段は『 biangbiang面 』と表記されるのだとか。
こっちが『 タイト 』(画数は84画)。
雲を3つ並べたタイ(意味はそのまま『雲』)、龍を3つ並べたトウ(意味は『龍が行く』)の2字を合体させた漢字。
日本で生まれた和製漢字で、人の苗字として文献に残っています。
しかし実際にその苗字の人物が居たという確証が無いため、誰かが難読漢字を作って仮名やペンネームとして使ったものが残ったのではないか、という説があります。
現代においては逆にその画数と読みにくさを逆手に取って、個性的な社名や店名として用いられることがあります。
戦隊ロボの合体した姿みたいだ…。
学生の頃、漢字検定1級を取った時になんかこういうゴチャッとした漢字を覚えたような(記憶が既に遠い)。
そういう検定試験とか特殊な状況でしか出会わない漢字のような気がします。
当然この漢字を表示できるフォントを入れていないPCでは表示されないので、例えば源ノシリーズのフォントを使って誰かにこの漢字をメールで送っても、相手が対応できるフォントを入れていない場合は空白か文字化け状態になるのでご注意ください。
シーケンスで入力
この2文字はいずれも、通常の日本語変換では出てこないため、源ノ角ゴシック等のインストール後に漢字を呼び出そうと思ったらエスケープシーケンスという入力方法で呼び出すしかありません。
⿺辶⿳穴⿰月⿰⿲⿱幺長⿱言馬⿱幺長刂心
⿳雲⿲雲龍雲⿰龍龍
↑このシーケンスをコピペして、その部分に源ノ角ゴシックや源ノ明朝フォントを指定すれば漢字が出ます。
過去記事
フォントについての他記事も宜しければ合わせてご覧ください。
【文字フォント】フォントの種類と変更方法
【文字フォント】フォントに歴史あり
【文字フォント】源ノ明朝(げんの みんちょう)のインストール手順(この記事です)
【文字フォント】Calligraphrで自作の手書きフォントを作る
【2018年版】おすすめ英字フリーフォント